大学生の退屈しのぎ

底知れぬ音楽と映画と文学と...

【歌詞和訳】Rex Orange County「Face to Face」

2019年発売のサードアルバム「Pony」収録のポップソング。

気弱な少年の日記みたいな歌詞がすごく良い。高校生ぐらいの時期、失恋に沈んだときにこんな曲があったらと思ってしまう。

 

 

I grew up, you grew down, we found out

僕は大人になって、君も年をとった

そして僕らは気が付いたんだ


Everything matters now (Everything)

全部が大切だったということに


We grew up while you let yourself down

僕たちは成長した 君が自分自身に失望している間に


I want out

僕は外に出たい

 


She calmed me down that night I freaked out

彼女は僕が壊れてしまった夜を静めてくれた


We stayed up, I threw up in that house

僕たちは遅くまで起きていて、僕はその家で気分が悪くなったけど


She woke up face-to-face from the bed

彼女が起きて寝室からビデオ通話してくれた


Two in the en-suite, one in the early

二人は一緒に、すぐに一つになった


She was like eight hours ahead

彼女のいるところは8時間先に進んでるみたいだった


Two different countries, slept in a one-piece

違う2つの国で一つになって眠った


Baby boy in full effect

幼い少年は精一杯努力したけど


And you couldn't see me, call back, repeat

君は僕に会うことも 電話をかけなおすことも 繰り返すこともできなかった


That's all thanks to poor connection

全然足りなかった繋がりにも精一杯の感謝を込めて


Fun for me, no

僕は楽しめた、のかな


Most time, it's a pain in the neck

ほとんどの時間は首の痛みになって残ってる


I said it's not that fun, see

僕はそんな楽しいものじゃないって言ったけど、わかるだろ

 

Everything makes me wanna quit while I'm ahead

全部が僕を黙らせようとしているみたいなんだ 僕が前に向かっていても


Honestly

正直に言えばね



She wakes, we face-to-face from the bed

彼女は起きて、僕たちはベッドでビデオ通話をしている

 

I wish I could be with her instead

代わりに彼女と一緒にいれたらなって思うよ

 

When we speak face-to-face from the bed

僕たちが寝室でビデオ通話していた時に

 

Things go wayward and I end up upset, but

色んなことがどんどんわがままになってって僕は動揺してしまった、でも

 

 

Never had done

決して終わらない


No, I never had

僕はまだ何も


Ooh

あぁ



Maybe we grew outward (Yeah)

きっと僕たちはどんどん上辺だけになっていって


It's true, I kept the truth to myself

その事実を僕はずっと言わないでいたんだ


Now I'm nothing but a coward (Cow-)

今僕は厄介者以外の何物でもない


And you were too busy making friends

そして君は友達を作るのに忙しすぎたみたい

 

You were occupied, I was in the shower

君は支配されていて、僕はシャワーを浴びたんだ

 

 

You were unaware, I was fully clothed

君は気づいてなかったけど、僕は正装をしていたんだ

 

And you didn't know about this

ついに君はこのことを知らなかった

 

But you wouldn't even really need to know

でも君は本当に知る必要さえなかったんだろう

 

So continue picking flowers (Mm)

だから花を摘み続けて


Remember why you're here, my friend

どうして君がいるのか覚えてるよ、マイフレンド

 

You can sit back and relax

君は後ろに座ってリラックスできるから

 

And they'll always love you now and then

そして彼らは君をいつも愛するんだ たまにね

 

They'll always love you now and then

時に彼らは君をいつも愛するんだろう 

 

Always love you now and then

時には君をいつも愛するんだろう

 

They'll always love you

彼らは君をいつも愛するんだろう

 

It's true

それは本当のことだ



She wakes, we face-to-face from the bed

彼女は起きて、僕らはベッドでビデオ通話をする


I wish I could be with her instead

電話の代わりに一緒にいれたらなって思う


When we speak face-to-face from the head

僕らが向かい合って理屈で話すときは


Things go wayward and I end up upset

物事はわがままになって僕は結局動揺してしまう

 

 

 

Let me be over there again

僕をまたそこにいさせてよ


I wish I could be with her instead

代わりに彼女と一緒にいたいんだ


Let me return for the night shift

変わってしまったあの夜に僕を戻してよ

 

I miss her like she's my only friend

彼女がたった一人の友達なような気がして恋しいんだ

 

My only friend, 100 percent

僕のたった一人の友達さ、100パーセント

 

I unplugged, then I dipped on my friends

僕は電源が入っていなくて友達に染まりつつある

 

My world got so much smaller this year

僕の世界は今年で小さくなってしまった

 

Tell me 'bout it

そのことについて何か言ってよ

 


She wakes, we face-to-face from her bed

彼女は起きて、僕たちは彼女のベッド向き合っている


Instead, instead, yeah

代わりに、電話の代わりに、あぁ


When we speak face-to-face from the head

僕たちが向かい合って理論的に話そうとするとき


From the head, yeah, yeah

理論的に、そうさ


She wakes, we face-to-face from the bed

彼女は目を覚まして、僕たちはベッドでビデオ通話する


I wish I could be with her instead

電話の代わりに一緒にいれたらって思う


When we speak face-to-face from the head

僕たちが向かい合って理屈で話すとき


Things go wayward and I end up upset

色んな物事がわがままに変わって僕は結局動揺してしまう


Let me be over there again

僕をまたそこにいさせてよ


I wish I could be with her instead

代わりに彼女と一緒にいたいんだ


Let me return for the night shift

変わってしまったあの夜に僕を連れ戻してよ


I miss her like she's my only friend

彼女がたった一人の友達みたいに思えて恋しいんだ

 

 

I grew up, you grew down, we found out

僕は大人になって、君も年を取った

僕たちは気づいたんだ

 

Everything matters now

全てが意味のある事なんだって

 

We grew up while you let yourself down

僕たちは成長した 君が自分自身に失望している間に

 

I want out

外に出たいんだ

 

(参考:Genius Lylics)

 

 

映画「太陽を盗んだ男」感想 退屈だから原爆を作った物理教師の話

太陽を盗んだ男(1979)

監督:長谷川和彦

出演:沢田研二菅原文太池上季実子

 

あらすじ

中学校の物理教師、城戸誠(沢田研二)が原子力発電所からプルトニウムを盗み出し、自力で原爆を完成させる。そしてその原爆を使い政府に「ナイターを最後まで見せろ」「ローリング・ストーンズを来日させろ」などと要求をするようになる。

 

刺激のない日々に訪れた変化

中学校で物理を教えている城戸誠のクラスは、ある日バスジャックに巻き込まれる。

「死」に対する恐怖感もあまりなく、非日常を心のどこかで楽しんでいる誠はそこで出会った刑事、山下(菅原文太)とともに捨て身の行動をし、生徒たちの命を守ることに成功する。

 

ある日、誠は原子力発電所からプルトニウムを盗んでくる。(このカットはどことなく2001年宇宙の旅っぽく見える)

そして自宅で実験を重ねてついには完成させてしまう。

 

脅迫を始めるも要求が思いつかない

原爆が完成し、まずはバスジャックの時に出会った山下に連絡し「野球のナイターを最後まで放送しろ」と要求する。誠はその要求を飲ませることになんとか成功し歓喜する。「俺は9番だ」と山下に名乗る。誠は核の保有国が8つで自分はその9番目という意味だと説明する。

 

要求が思いつかなくなってしまった誠はラジオで「原爆を持ってるんだが、なんでも叶うとしたら何がしたい」と質問する。ラジオDJの沢井零子が「ローリング・ストーンズ来日公演なんてどうかしら」と言うと、次の要求をそれに決め山下に連絡する。

 

ちなみに、原爆が完成したことにより部屋の中で踊り狂う誠のバックでBob Marleyの代表曲「Get up, Stand up」が流れるシーンがあるが、この曲は「自分たちの権利のために立ち上がれ」「戦いをあきらめるな」と歌われており、明確な目的を持って戦うわけではない誠に対する痛烈な皮肉になっている。

 

 

 

最後の要求と転機

ストーンズの公演が決定し新聞でも報道されると、誠は次に原爆製造のために作った借金の返済を迫られたため五億円を要求する。

しかし電話の逆探知でデパートの屋上にいることが警察にばれてしまい、デパートは封鎖され誠は閉じ込められる。

「原爆のスイッチの切り方を教えるから封鎖を解け」「五億円を屋上からばらまけ」この二つの指示により、誠はなんとか群衆の中に紛れ逃げ込むことに成功する。現金がばらまかれ通りはパニックになっていた。

 

ビルの窓ガラスを割って侵入し原爆を再び取り戻した誠は車で暴走してなんとか逃げ切り、また起爆装置を入れる。

 

ローリング・ストーンズ公演の日、山下は誠に銃をつきつけられ屋上へと向かい、二人は直接対決する。銃弾を何発も浴びた山下は誠を引きずり転落。しかし、生きながらえたのは誠だけだった。

原爆を抱えながらよろよろと歩く誠。放射能を浴びて自身の体も蝕まれていく。やがて30分が経過し、原爆は爆発する。

 

感想:虚無感と孤独とコミュニケーション願望

誠は結局何がしたかったのかというと、何もない。ただ、漠然と社会と関わりたかったのかもしれないし、誰かと話したいという気持ちがあったのかもしれない。あるいはもっと漠然と持て余していた精神的なエネルギーを爆発させたかっただけなのかも。でも動機もないテロに強く人間味を感じてしまったなぁと思う。

原爆というテーマを扱っておきながら、原子力発電の賛否とか、そういうものが全くなかったのもなんだか良かった。社会に対しての反抗的な姿勢よりも、ひたすらに孤独で暴走する人間の孤独や虚無感を垣間見れたという感触の方が強い作品だった。

  

 

【和訳】Teenage Fanclub「Neil Jung」

TFCの数ある名盤の中でも屈指の一枚「Grand Prix」

中でも力強くシンプルなギターに乗せた泣きメロの「Neil Jung」は本当にその中でも外せない一曲。

ニール・ヤング精神分析ユング?をかけたようなタイトルだけど、歌詞は未練たらたらの情けない失恋ソングなのも良い。

 

You had a girlfriend

君には彼女がいた


That wasn't good enough for you

でもそれだけで君は満足しなかったんだ


She was younger

彼女は年下だった


But that was old enough you knew

でも君が知っているより大人だったんだ



To get undressed for you

君のために服を脱いで


Stressed for you

君のために我慢していた


Distorting everything

何もかも君に合わせて


Became depressed for you

君のために落ち込んでいたんだ



You were changing

君は変わっていった


Didn't want to stay the same

このままではいたくなかったんだ


Re-arranging

並び変えて


Dropped a letter from your name

自分の名前から一つ文字を消した


She'd get uptight with you

彼女は君に我慢できなくなって


Would fight with you

喧嘩するようになる


And you would never win

そしたら君は絶対に勝てなかったんだ


It wasn't right for you

君にとってそれは間違ってた



Was going nowhere

どこにも行けなかった


Couldn't take the pain and left it there

痛みを取り除くことはできなくて残ったままだった


Was going nowhere

どこにも行けなかったんだ


Couldn't take the pain and left it there

痛みを取り除くことはできなくて残ったまま



Not understanding

理解できなかったということは


Had a different point of view

違う視点を持っていたということ


Tried to reach her

彼女に連絡をとろうとした


When she moved away from you

君のもとから彼女が離れた時に

 


She was confusing you

彼女は君を混乱させた


Using you

利用していたんだ


You couldn't understand

君にはそれが理解できなかった


Began amusing you

君を慰めようとし始めたことも



Was going nowhere

どこにも行けなかった


Couldn't take the pain and left it there

痛みだけが消えなくて残ったまま


Was going nowhere

どこにも行けなかったんだ


Couldn't take the pain and left it there

痛みを取り除くことはできなくて残ったまま

 

 

 

彼女と僕なのではなく、自分のことを「You」と言ってることでより忘れられない自分のことも認めようとしてるのも涙腺にくる。失恋直後のあの息苦しさを思い出させる曲。

 

 

映画「ナチュラル・ボーン・キラーズ」感想 殺戮を繰り広げるクレイジーカップルの逃避行

ナチュラル・ボーン・キラーズ

 

あらすじ

父親に性的虐待を受けていたマロリーは、肉の配達員のミッキーと恋に落ち両親を殺して逃避行を始める。行く先々で50人以上も殺した二人は遂に刑務所に収監されてしまうが、そこでも全米が中継してる中で脱走を試みる

 

この映画は理由もなく行く先々で出会った人々を殺し続けるカップルを描いた衝撃作。

監督はオリバー・ストーンだけど、原案を手がけたタランティーノの作風が濃く出ている印象だった(それでもストーンが脚本を大幅に変えたことで揉めたりしたみたいですが)

 

ミッキーのルックス的にレオンを思い浮かべる人もいるかもしれないけど、どちらかというと時計仕掛けのオレンジに近いような狂気だった。

 

衝撃のオープニングと二人が出会うまで

店の中で音楽に合わせて気持ち良く大胆な踊りをするマロリーに卑猥な言葉を浴びせる男性客がやってくる。マロリーがその男に殴りかかると2人は殺戮を開始し店内に残った客を「どれにしようかな」で一人だけ残して、それ以外は全員殺してしまう。そしてその残った一人の男に「ミッキーとマロリーがやったって言え」と脅す。

 

その後二人は車で逃走しながら会った人々を次々に殺していく。

血にまみれた人間や悪魔、アニメーションで描かれた殺人シーンなどとにかく、めまぐるしい演出に圧倒される。

中でも一番強烈だったのは、性的虐待を受けてるマロリーの家族のやりとりがコメディ番組みたいに描かれていたところ。

父親がマロリーに「シャワーを浴びて待て。よく洗うんだぞ。あとでじっくり調べるからな」と言うと、マロリーが泣き出し、観客の笑い声と歓声が入る。めちゃくちゃに不快なのだけど、わざと不快をあおるようにしているのだと思う。ちなみにこのときにでてくる紫のパンチパーマで気弱な母親は時計仕掛けのオレンジの主人公・アレックスの母親にどことなく似ている。

そしてここで肉の配達をしていたミッキーが登場し、二人は恋に落ちる。この演出もくさい演出で敢えてチープに行われているところが面白い。そしてその性的虐待の父親を殺し、傍観していた母親も殺し、地獄みたいな家庭を焼き払って颯爽とマロリーを助けたミッキーはその瞬間は殺人者ではなく救世主に見えた。

 

殺人を繰り返す二人の逃避行の終焉

2人は橋の上で2人だけの結婚式を挙げて愛を誓う。そしてそれから結びつきを強めた二人はどんどん人を殺していくが、ついには警察に捕まってしまう。

運の尽きはまず道を間違えてインディアンの家に転がり込んだところ。食べ物もくれ、泊めてくれたインディアンをミッキーは悪魔の幻覚を見たことにより殺してしまう。(インディアンには2人の背後にいる“悪魔”が見えており、妻を亡くし亡霊のように生きていたことから、死を望んでいたようにもみえるが)

「食べ物をくれて泊めてくれた人を殺すなんて!」とマロリーはミッキーを責める。

2人は逃げようとするがそこにいた毒蛇にかまれ、急遽ドラッグストアに駆け込むが、ドラッグストアの店主がミッキーとマロリーをテレビで見ていたため通報してしまう。

2人は逮捕され、場面は一年後に移動する。

 

 

カルト的人気と再脱走、そしてハッピーエンド。

ミッキーとマロリーは若者からカルト的人気を誇るようになっていた。

キャスターのウェイン・ゲール(ロバート・ダウニー・Jr)は刑務所内でインタビューして儲けようと思いつき、ミッキーにインタビューをする。ミッキーはその中で「自分は悪魔の使者」だと言い、自身の思想や倫理観を語る。

 

ウェイン・ゲールはドラッグを使用しており、不倫もしている。そして視聴率のことしか考えていない人間で、ミッキーとマロリーを逮捕し書籍まで発行したドワイト・マクラスキー刑事(トム・サイズモア)も、マロリーが「お気に入り」で独房の中で無理やり行為に及ぼうとする。ミッキーとマロリーだけが病的というよりは登場人物みんなどこか病的な感じがする。

 

家庭の崩壊をコメディ風に扱うことで、そういうものを楽しんでいる視聴者やマスコミを痛烈に風刺しているところもそうだが、何より一番強烈だったのはラストシーン。ミッキーのインタビュー中に刑務所内で暴動が起こり、その騒ぎに乗じて脱走を試みるミッキーとマロリーの様子が全米に中継されるが、その中で何人もの人が死ぬのを見ていたのにも関わらず、ミッキーがカメラを破壊したことにより番組が終わると退屈そうに視聴者はすぐさまチャンネルを変え新しい娯楽を見つけ出そうとする。(トゥルーマン・ショーもこんな感じの終わり方だった)

 

確かにテレビは一種のショーであることは間違いないが、リアルで起こっていることまでもをそのショーの題材に取り上げ、娯楽としてしまうメディアの在り方や視聴者に疑問を感じざるをえない(ようにこの映画は作られている)

 

ミッキーとマロリーをかっこいいという若者が「僕は人命は尊重するよ。でも、ミッキーとマロリーはかっこいい」と言っていたが、この発言もあくまで殺人を画面内の別世界の出来事としてとらえているからこその矛盾が生まれている。

 

ミッキーとマロリーは脱走後、子供を持ち、親になっていた。人を何十人も殺していた人間は親になって「いつまでも幸せに暮らしましたとさ」的なハッピーエンドとしてさらっと終わっていたのも衝撃的だった。

 

マスコミとそれに踊らされる大衆に対する痛烈な批判

ただ結局思ったことは、構成が時計仕掛けのオレンジにすごく似ているなと思ったんだけど(理由もなく非行に走る若者、犯罪者の若者を利用して儲けようとするマスコミという構図など)、この映画の殺人シーンは娯楽として割り切って楽しむようにできているとしか思えなかったところで矛盾しているような気がしてしまったということ。時計仕掛けのオレンジは老人を集団暴行したり、ドラッグをやってハイになった若者たちが女性に暴行するシーンなんかは見ていて不快感を覚えるものだったけど、この映画のそういうシーンはアトラクションみたいに楽しめてしまったので、それでいて「リアルさえも娯楽にしてしまう」視聴者やマスコミを風刺するのはどうなんだろう、と。まぁそうやって自分を顧みること自体に意味があったのかもしれないですが。

 

でも映画自体の感想としては、すごく好みの映画でした。サントラはかっこいいし終始ぶっとんでて、タランティーノが好きな人間ならきっと魅了されてしまうこと間違いなしの映画。ファッションもすごくかっこいいし、実際にこれを真似た事件が起きて問題になったということもあったけど、あくまで一つのフィクションとしてなら魅了されるのはわからなくもないと思ってしまったのが正直なところ。

 

 

 

三島由紀夫「音楽」感想 地獄の"音楽"を聴いてしまった女性の話

「音楽」というタイトルに思わず惹かれ購入したが、ここでいう音楽は性行為によるオーガズムのことであり、想像とは全くかけ離れた生々しい1人の女性の性の物語だった。

 

精神分析医である主人公の汐見の分析を通して、麗子という悪魔的な魅力を持った女性の抱えている問題について迫っていくという形で物語は展開していく。

 

初めて来診した日、麗子は「私、音楽が聞こえないんです」と告白する。汐見は理解することができなかったが、それが後に不感症であることの婉曲的な言い回しだったとわかる。

 

麗子には江上隆一という婚約者がいた。彼は大学時代はボート部の健康そうな美男子で、会社でも人気者の青年だったが、彼に対しても最初の晩から感じることはできなかった。

 

汐見は強い知的好奇心に駆られながら麗子の治療を続けていく。患者を密室に閉じ込めてそこで好きなだけ「連想ゲーム」のようなことをさせたりして麗子と対話をし、彼女がどのような問題を抱えているかを探っていく。

 

やがて麗子の問題には実兄の存在が関係していることがわかる。麗子は兄と寝ているときに体を触られた時の甘い快感が忘れられなかったのだった。そしてそれ以来、その甘い感覚と兄の存在は切り離せないものになりますます麗子は兄に執着するようになっていた。

 

あるとき、麗子は両親から無理やり婚約者にさせられた又いとこが病気で瀕死であると聞き駆けつける。彼は無理やり麗子の「初めて」を奪った相手であり、厭うべき婚約者であったが、それにも関わらず麗子は彼の死んだ鶏の肢のような手を握り、看病を続けていく。そして彼女は汐見にあのとき確かに「音楽」を聴いたのだ、と告白する。

 

また、彼女は療養中の旅行先で不能の青年・花井と出会う。麗子は不能であるがゆえに花井を愛しく思い、関係を深めていく。やはりそこでも彼女は音楽を聴いた。又いとこ同様、彼女は不健康な死の匂いのするときにしか音楽が聴けないということが分かっていく。

 

しかし、麗子の真の問題は兄との再会にあった。大学の寄宿先に現れた兄は風体もヤクザのように変わっており、麗子が兄のアパートにいると、途中で女が帰ってきてしまい兄と口論を始める。

兄は麗子のことを妹だと言うが、女は信じず、本当に妹だと言うなら目の前で寝てみろと言いだした。口論が終わらずムキになった兄はそれを実践し妹を犯してしまった。

 

麗子はその獣行の記憶を心の中でどんどん美化し神聖なものに変化させようとする。

 

一面から見れば、それはあまりに猥雑であるために、猥雑を通り越して神聖になった一つの儀式のようなものであった。

 

無残な一夜の記憶が、こうして少しずつ変貌し、麗子は思い出すまい思い出すまいとしながらも、心を占めることは一つで、いつでも考えがそこへ戻りながら、次第にそこを掃き清め、自分を救うために、少しずつその記憶を美化し、浄化しようと思うようになっていた。彼女はそれを幻と考えることにしたが、もし幻と考えれば、下品な酒場の女との乱酔の果ての争いに、ヤクザの兄が妹を犯すという、あくどい幻ではなくて、象徴的な神聖な幻に変貌しなければならなかった。

 

つまり麗子はこの記憶を「神聖なもの」としたために健康な男の代表のような男である隆一との行為に何も感じなくなってしまったのであり、病人や不能の男にしか音楽を聴くことはなくなってしまったのだった。

 

そうです。あなたは地獄の音楽をきいてしまったのですね。その地獄の音楽から離れようとするたびに、あなたの耳は音楽をきこうとしなくなったのですね。そして時折あなたの耳によみがえる音楽は、極端なみじめさか極端な怖ろしい神聖さ、つまり地獄に関係のある状況に直面したときだけだったのですね。悪臭を放つ瀕死の病人の床に侍っているときか、哀れな不能の男を傍らに置いているときか.......

 

汐見と江上と麗子と看護師の明美の四人で兄に会いに行くと、麗子は「兄の子」を見て衝撃を受ける。その様子を見て汐見は麗子の本当の願望は兄の子を産むことにあり、そのために母胎を空けておきたいから不感症だったのだと気が付く。兄の子を実際に見て、自分が入り込む余地がないと見せつけられたことで彼女の問題は根本的に解消された。

 

 

感想

個人的には冷静沈着に学問としての興味にそそられているかのように見える汐見のぼんやりとした恋心が見えるところも面白いと感じた。

 

私には負け惜しみの自信があり、どんなに深く彼女の肉体を知った男よりも、私のほうがよく知っているという、すべての男に対する軽蔑感があった。どんなに詳細に彼女の肉体の襞に分け入り、どんなに隈なく彼女の美しい皮膚を味わっても、男たちは決して私のように彼女の真の深所へ、彼女のもっとも深いおののきと歓喜に触れることはできない。論より証拠、江上青年を見るがいい。死んでいった婚約者を見るがいい。さらには最近の花井青年を見るがいい。

 

他にも汐見は麗子が旅に出ると聞いて、他の男と一緒なんじゃないかと思わず東京駅まで追いかけたりする場面もある。

 

麗子が肝心の兄の問題を隠すために何度も吐いた精巧な嘘や、兄の獣行を神聖な甘い記憶として転化していく描写など、三島由紀夫の綺麗な文章で綴られた一人の魅力的な麗子という女性の性の旅路にひたすらに翻弄されてしまったなぁという感じが強く残った。特に江上青年の健康的ながっしりとした胸板が「自分を責めているような気がする」と描写されている辺りはもう本当にさすがとしか言いようがない。

 

三島由紀夫の作品の中では異色な一作なのかもしれないが、やはり人間の深淵のように思える部分に鋭く切り込む快感は他の作品と変わらず強い。個人的には金閣寺仮面の告白と並ぶくらいの強烈な後味を残す作品だったと感じた。

 

 

宮沢賢治「よだかの星」感想 星になれた嫌われ者ときのこ帝国の話

 よだかは、実にみにくい鳥です。
 顔は、ところどころ、味噌みそをつけたようにまだらで、くちばしは、ひらたくて、耳までさけています。
 足は、まるでよぼよぼで、一間いっけんとも歩けません。
 ほかの鳥は、もう、よだかの顔を見ただけでも、いやになってしまうという工合ぐあいでした。

 

醜い容姿のせいで周りから疎まれていた夜鷹が星になれるまでの話。

 

嫌われ者のよだかは、他の鳥たちにもいじめられ、あるとき自分と名前が似ていることがずっと気に食わなかった鷹に「名前を市蔵に変えろ」と脅される。「神様にもらった名前なのでそれはできません」と言うも、「明日までに変えないと殺す」とよだかは言われてしまう。

 

悲しみに暮れながら空を飛んでいると自分の喉の中をカブトムシがばたばたと暴れるのを感じて、自分は今までこうやって数々の生き物を殺してきたんだと気づかされる。もうどんな生き物も殺したくない、そんな風に思ってよだかは大声で泣いてしまった。

 

ああ、かぶとむしや、たくさんの羽虫が 毎晩僕に殺される。そしてそのただ一つの僕がこんどは鷹に殺される。それがこんなにつらいのだ。ああ、つらい、つらい。僕はもう虫をたべないで飢えて死のう。

 

最後かもしれないと思い、よだかは弟の川せみの所に会いに行く。そして「僕は遠くに行ってしまう」「いたずらに魚をとったりしないでおくれ」と伝えた。

 

よだかはその夜、遠くの星になりたいと願う。「あなたのところへ連れて行ってください」と色んな星々に頼むも、「お前はよだかだろう」と相手にされずばかにされ否定され続ける。

 

みんなに断られ続けた夜鷹は高い叫び声をあげて、まっすぐ空をのぼっていく。でものぼってものぼっても星のもとへは届かず、泣きながら空を見上げ死んでしまう。

 

しばらくたってよだかが目を開けると、自分の体が青白い光を発して、燃えているのに気が付く。すぐ隣にはカシオペア座が輝いていた。

 

 そしてよだかの星は燃えつづけました。いつまでもいつまでも燃えつづけました。

 今でもまだ燃えています。

 

 

 

プラネタリウムで聞くような悲しい星の神話みたいな話。数ページしかないけど、でもここには神話的じゃない「殺すことなしでは生きられない」、殺生という業を再考させられるものもある。自分が今まで殺してきた生命に思いを馳せて、「自分さえいなくなってしまえば」と考えるよだかは、みんなから醜いと言われていても本当に綺麗な心を持っているなと思った。そしてその食物連鎖から抜け出すための手段は宮沢賢治の世界では「星になること」でしかないんだろうなぁと。

 

よだかは、自分の力で星のところへたどり着いたわけではなくて、飛んでも飛んでも星のところにはまるで届かないままぼろぼろになって死んでしまう。そして気が付くとそのあとに自分が星として燃えているのを感じたという流れ。

 

よだかがどうして星になれたのか、個人的には「よだかの綺麗な心を見てた神様が願いをかなえてくれた」という解釈よりも、せめてもの救いを描いた「願望」なんじゃないかと感じた。外見だけがモノを言い、口がうまくて人を笑ったり、自分のために他の生き物を殺しても気にしないような人間が地上では勝ってしまうかもしれないけど、空に輝いている星は地上では報われなかった綺麗な生命の炎だと思いたいという宮沢賢治の切実な願いなんじゃないかなと。(宮沢賢治は虫も殺せないほどの人だったとか)

 

神様がいるなら、いじめられて傷ついたよだかをもっと前に救ってほしかった、というのはもちろんよだかに自分を重ねた僕の願望でしかないけど、どうしてもそう思ってしまう。

最後のラストが救いであることに間違いはないんだけど、ただ「星になれたこと」が救いというよりは、よだかが死んでも星になれたのを認識できたことが一番の救いなんじゃないかという気もする。

 

 

夜鷹

夜鷹

  • きのこ帝国
  • ロック
  • ¥200
  • provided courtesy of iTunes

 

余談だけどきのこ帝国に夜鷹という曲があり、これはこの話がモデルになっている。「ティコの星」はカシオペア座のとなりにあり、後ろに天の川という本文からもよだかの星のモデルになったと言われてる星でもある。

細胞分裂をやめられない」「殺すことでしか生きられない」「笑うあいつの目の奥は汚れている」「無数の悲しみとともに、すべてを夜へ」などこの話と完全にリンクする歌詞もあって、改めて「よだかの星」を読んでから聞いてみると面白い。ちなみに星巡りの唄は「双子の星」「銀河鉄道の夜」にも出てくる。この死の匂いがする鬱屈とした世界観は「よだかの星」を読んだときに感じたやるせなさに寄り添ってくれる曲だなぁと改めて思った。

 

▽「よだかの星」「セロ弾きのゴーシュ」そして表題作の「銀河鉄道の夜」収録されてます。

 

 

 

【祝・来日】Ride「Nowhere」全曲和訳 後半(Vapour Trail~Today)

 www.neatnobibouroku.info

 

(参考:Genius Lyrics)

 

8.Vapour Trail

First you look so strong, Then you fade away

強烈な印象を残したかと思えば 君は消えてしまった

The sun will blind my eyes, I love you anyway

太陽が僕の目から光を奪うと、君への愛情を感じる

First you form a smile, I watch you for a while

君が笑顔になったと思うと、僕はしばらく見つめてしまうんだ

You are a vapour trail In a deep blue sky

君は青々とした空に走る飛行機雲みたいだよ

Tremble with a sigh, glitter in your eye

吐息に震える、君の瞳の中のきらめき

You seem to come and go, I never seem to know

君は行ってしまったのかな

僕にはもう知りようがないみたいだ

And all my time is yours as much as mine

僕の人生のすべての時間は君のものなのに

We never have enough time to show our love.

僕たちがお互いの愛を確かめ合うために必要な時間は全然足りていないんだ

 

9.Taste

Floating like a smoke ring, it cannot be regained

煙の輪みたいにどこかに漂って もう二度と手に入らない
Now it's touched, it's broken

今は触れるけど 壊れてる
The taste just slips away, the taste just slips away

その感触も過ぎ去って離れていく
I just want to know

僕はただ知りたいだけなのに

The taste just slips away, the taste just slips away

その感触は過ぎ去って 離れていくんだ
I just want to know

僕はただ知りたい
I don't want to tell you what you want to know

君に知りたいと思ってることは言いたくないけど
I don't want to tell you

君には言いたくないんだ

As hard as right can be, it can feel so wrong

正しくあろうとするのは難しいけど 僕はひどく間違っているような気がする
Too much to leave, now it's all gone wrong

置いていくには多すぎたものが今では全て悪いものになってしまった
It's all gone wrong but what's right or wrong?
全ては間違ってしまったみたいだけど、でも正しいとか間違いとかって一体なんなんだろう?
I don't know, I don't know the taste just slips away

わからない、感覚が消えてしまったのかもわからないんだ

 

10.Here And Now

The bridge holds back the sky, can't hold back what's inside

橋が空を隠しているけど、内側にあるものまでは隠せない
And the train above me sounds like the music in my head

僕の頭上の電車の音は頭の中で音楽みたいに響く
My thoughts are undecided, I think it so I hide it

僕の考えは決まっていない、だからこそ隠そうとしてしまうんだと思う


And the train rushes past like a day gone too fast

電車は急いで走り去る 過ぎ去ってしまったあの日みたいに


I wish that I was stronger, could keep my head for longer

もっと強かったら もう少しの間正気でいれたかもしれない
I sit and watch my fear but it won't dissapear

座り込んで自分の抱えてる恐怖と向き合うけど 消えないんだ
I can dream myself away, lose myself for days

僕は遠くに自分自身を夢見ることができるから しばらく自分を喪失してしまう


And the train rushes past like a day gone too fast
電車は急いで走り去る 過ぎ去ってしまった日々みたいに
All I know, all I know, all I know is here and now
僕がわかってること、僕がわかってることと言えば今この瞬間だけ
All I know, all I know, all I know is here and now
僕がわかってることの全部は今この瞬間だけなんだ
And the train rushes past like a day gone too fast

電車は急いで走り去る 過ぎ去ってしまった日々みたいに
And the train rushes past like a life gone too fast

電車は急いで走り去る 過ぎ去ってしまった日々みたいに

11.Nowhere

 

I should have known better than to expect it all

期待するということ以上にもっと色んなことを知ってたらよかったのに
You want everything and you end up grabbing at air

君はすべてを欲しがり最後は空中でさえも何かを手に入れようとする
I had so much to give so much hope, we held each other high

希望を与えるものをたくさん僕はもっていて、僕たちは2人で楽しんだ
But the heroes are gone and all that's left is you and me

でもそのヒーローは消えてしまい残されたのは君と僕だけ
I learned the hard way that life should be easy

生きやすい人生がどんなに困難であるか学んだ
But I want you to know that it was hard to show the things that I know now
でも君に分かってほしい、僕が今知っている物事を君に示すのはすごく難しいってことを
All that's left is you and me and here we are nowhere

残されたのは君と僕だけで僕たち2人はどこにもいない
All that's left is you and me and here we are nowhere

残されたのは君と僕だけであの時の2人はどこにもいないんだ

 

 

12.Unfamiliar

 

You're rushing for a time that you don't know

君は時間に追われているということを知らない
Curious of what your feelings are you go
君の感情がどんな風に変わるのかを気にしてしまう
Losing sight of that familiar touch you know

君が慣れ親しんだ’あの感触を見失いながら
Sinking into unknown beauty for a day

一日中、未知の美しさに溺れて
Living everything as it comes and goes

いなくなってしまった全ての物の中に生きている
The only times you know have passed away
君が知っている時間なんてものは消滅した
Now you're looking back where everything seems here

今、君はここにあると思える全てのものを逆戻りしている
Scared of letting all that comfort disappear
その慰めが全て消えてしまうのを恐れながら
Losing sight of that familiar touch you know

君が慣れ親しんでいたあの感触を見失いながら
Sinking into unknown beauty for a day

一日中、未知の美しさに溺れて
Living everything as it comes and goes

いなくなってしまった全ての物の中に生きている
The only times you know have passed away

君が知っている時間なんてものは死んでしまったも同然だ

 

13.Sennen

 

Eyes aflame, she ran away

目を真っ赤にして 彼女は行ってしまった
I will be where I want to be

僕は自分の好きな場所にいるだろう
Need some space to be alone

1人になれる場所が必要で
Need a place to call my own

自分のものだと言える居場所が必要だった


Can't stay here another day

ここにいることはもうできない
Think awhile, walk away

少し考えて歩き出した
People wonder where she's gone

人々は彼女がどこに行ってしまったのか考える
All they see's a strange shaped stone

彼らが見たものは変な形をした石だけだった

They'll never invade her now

もう彼らは彼女を傷つけたりしない
They'll never invade her now

もう彼らは彼女を傷つけたりしない
They'll never invade her now

もう彼らは彼女を傷つけたりしない
They'll never invade her now

もう彼らは彼女を傷つけたりしないだろう

 

14.Beneath

 

Rise above the rain

雨の上に昇っていく
For all our sins we're not to blame

僕たちは自分で犯した罪を責めたりはしない
This time will pass away not yours or mine

この瞬間は過ぎ去っていくだろう

And what we tried so hard to find

僕たちが必死で見つけようとしたものは
Is already in our mind

もう心の中にあるんだ

Stand beneath the sun

太陽の下に立つと
And know that soon our time will come

その時がやってきたと知る
And we can be the way we want to be

そして僕たちは望むようになれるんだ

The sun will set

太陽は沈む
And then the sun will rise

そして昇る
We watch it pass across the skies

太陽が空を通り過ぎるのを見ると
So beautiful and warm

とても美しくて暖かくて
As we forget the storm

嵐なんて忘れてしまうんだ

 

 

15.Today

 

Wake up see the sun

起きて太陽を見る
What's done is done

終わってしまったことはもう仕方がない

Today

そんな今日

Last thing I remember

僕が覚えている最後のことは
I don't know

わからないということだった

I want her

彼女が欲しい
I don't want her

いやもう欲しくない

I need her

彼女が必要だ
I don't need her

いや別に必要じゃない

Today

そんな今日