大学生の退屈しのぎ

底知れぬ音楽と映画と文学と...

孤高のロック詩人Lou Reed【ソロ時代のおすすめ17曲紹介】

Lou Reed

ルー・リードLou Reed, 1942年3月2日- 2013年10月27日)は、アメリカニューヨーク州ブルックリン出身のミュージシャン。本名ルイス・アレン・リード (Lewis Allen Reed)。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの時代から前衛性とポップさを兼ね備えた斬新かつ挑戦的な音楽性、陰翳と知性に富みながらも様々なスタイルを持つヴォーカル、音像を形成する上で欠かせないオリジナリティ溢れる独創的なギター・プレイ、人間の暗部を深く鋭く見つめる独特の詩世界を持ち、同時期にデビューしたデヴィッド・ボウイを始め、後のパンク・ロック/ニュー・ウェイヴ、オルタナティヴ・ロック、ひいては音楽界全体に及ぼした影響は計り知れない。ロック・ミュージックにおける芸術性の向上、そのイノヴェーションに多大な貢献を果たした、20世紀以降における最重要アーティストの一人である。(Wikipedia

 

 

1.Wild Child

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ソロ時代の1st「ロックの幻想」はほとんどがヴェルヴェッツ時代に録音されていたものを録り直したものなんだけど、この曲はこのアルバムで初めて録音されたもの。

 

とにかく無駄がなくてかっこいい。

 

2.Perfect Day

youtu.be

なんて完璧な1日なんだろう

君といることができて僕は嬉しい

あぁなんて完璧な日なんだ

君が僕を何とか生かしてくれてる

 

トレインスポッティングユアン・マクレガーが薬のやりすぎで倒れてしまうシーンでも使われていた大名曲。デヴィッド・ボウイ色が強く出てる名盤「Transformer」でも珠玉の一曲。

フレーズの1つ1つも好きだし、物悲しい雰囲気も好きだし「君は自分の蒔いた種を刈り取らなくてはならない」って終わり方も好き。

 

3.Walk on the Wild Side

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ルー・リードの代表曲。

哀愁たっぷりのベースラインと、悲しい人々の物語を綴った歌詞。

歌詞もわからず聴くと耳障りの良い乾いた曲って感じだけど、詞の内容はかなり際どい。ここでいうワイルドサイドは「危険な世界」のことなんだろう。

 

4.Make Up

youtu.be

 

Transformerの中だったらあんまり目立たないのかもしれないけど、すごく好きな曲。ベースラインが面白い。

「You're slick little girl」と繰り返されてちょっと艶かしい女の子が想像できるのも素敵。。

 

5.Satellite of Love

 

youtu.be

一番好きな曲。「愛の人工衛星」ってタイトルからかっこいい。

人工衛星が空高く飛んでいくのをぼーっと家から見て、いなくなってしまった大好きな人に思いを馳せる。

秋の夜に外でお酒を飲みながら聴く時に良い。

 

6.Lady Day

 

youtu.be

アルバム「ベルリン」ではルー・リードがいかに詩人としても優れてるかがわかると思う。

彼女はバーのカウンターから降りてきて

そしてドアから出て行った

彼女が勝手にお家と呼んでいたホテルへと

濃い緑に汚れた壁をしたホテルだった

風呂とトイレは廊下にあった

 

このフレーズだけでも小説を読んでいるかのような気持ちになってしまう。

「彼女」のぶっきらぼうだけど魅力的なキャラクターがありありと浮かんでくる。

 

7.Men of Good Fortune

youtu.be

 

邦題は「富豪の息子」

 

貧乏人を軽蔑しながら、自分と同族の金持ちさえも横目で軽蔑してる男のぼやきのような歌。

 

「貧乏人は酒を飲んで喚くだけだ」と言いながらも「貧しい男たちはしばしばどんなことでもやれてしまう」「彼らにはいざという時頼れる金持ちのパパなんていないのに」とも歌っているのが面白い。

 

 

8.Caroline Says Ⅱ

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彼女が窓ガラスを割って拳を通した

あれは何だか可笑しかったよ

 

物語のように歌われるアルバム「ベルリン」の中で、キャロラインのはなし(1)で女王さまのように振舞っていた彼女が(2)では自殺しようとする。

 

「ベルリン」は全曲通して聴くアルバムだけど、個人的に(2)の方が好きなのでこっちを紹介。

 

綺麗なキーボードと優しいギターがキャロラインの精神的な死を追悼する。

「アラスカは冷たくなってしまった」という表現からも、自殺未遂をしたことによって主人公は彼女が死んでしまったように感じているのがわかる。

 

9.What's Good(The Thesis) 

youtu.be

人生とはマヨネーズ味のソーダのようだ

人生とは部屋のない空間のようなもので

人生とはベーコンとアイスクリームを合わせたようなものだ

つまり人生とはお前がいないってことなんだ

 

 

1992年に発表した「死」をテーマにしたアルバム「Magic and Loss」に収録。

パリ、テキサス」で知られる監督ヴィム・ヴェンダースの映画「夢の涯てまでも」のサントラとしても起用されている。

 

詞はもちろんルー・リード独特のクリーンギターと乾いたメロディーの良さが存分に出ていてとても好きな曲

 

 

10.Goodby Mass(In a Chapel Bodily Termination)

youtu.be

君が冗談を言ったんだと思ったんだ

「これはそんなんじゃないわ」

君は言うだろう

「私は明日、煙になってるの」

 

邦題は「教会に於ける肉体の終演」

 

とにかく全部がかっこいい。特にギターの暗いけどキャッチーなフレーズが好き。Magic and Lossの中でも一目惚れするように好きになった曲。

 

11.Dreamin'

 

youtu.be

「Dreamin', I'm always dreamin'」と物憂げに繰り返し、死んでしまった薬漬けの恋人を夢見る曲。

 

感傷に浸りたい時の1曲。

 

12.Halloween Parade

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80年代の最後の大名盤「New York」はキャッチーでヘヴィーさもあまりなくて凄く聴きやすかった記憶がある。

 

Halloween Parade〜」ってコーラスが可愛い。

 

13.Endless Cycle

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「New York」から好きな曲をもう一曲。正直「Romeo Had Juliette」からこの曲までの4曲は是非通して聞いて欲しい。

 

初めてアルバムで聴くなら一番聴きやすい所かもしれない。明るいフォークソング

14.Legendary Hearts

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この曲と同名のアルバム「Legendary Hearts」も個人的には「The Blue Mask」や「New York」と並ぶ名盤だと思う。

 

メロウで暖かいグルーヴ感が良い。ボソボソと呟くようなボーカルがとっつきにくいという人にも聴きやすい曲だと思う。

  

15.Martial Law

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同じく「Legendary Hearts」より

アクセントとして少しアップテンポなものも。洗練されたロックナンバーです。

 

 

16.Hang On to Your Emotions

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96年にリリースされたアルバム「Set the Twilight Reeling」より

 

アコースティックギターでしっとりと聴かせる曲。だけど、後半にかけて明るくなっていくので聴きやすい。

 

17.Coney Island Baby

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ラストはこの曲で。76年に発表された同名アルバム「Coney Island Baby」より。

 

アルバムの中でもこの曲は頭一つ抜けていると思う。暗いけどどこか暖かみのある一曲。

 

ルー・リードのアルバムを順番に聴いた時、前作の「Metal Machine Music」が難解すぎて聴くのが苦行なほどだったんだけど、このアルバムはとても聴きやすくて初めから好きになれた。この表題曲だけでも必聴です。

 

 

弱者に寄り添う音楽、The Smiths【おすすめ12曲紹介】

The Smiths

ザ・スミス (英: The Smiths) は、イギリスのロック/ ポストパンクバンド。1982年、マンチェスターにて結成。インディーズ・レーベルの「ラフ・トレード」に所属し、4枚のスタジオ・アルバムを制作した後1987年9月に解散した。メンバーは労働者階級出身。

モリッシーのねじれたユーモアのある歌詞やイギリス社会批判、疎外され恋愛に苦しむ自分を反映した歌詞は、若者文化の中の不満に満ちた層、チャートに多かったシンセサイザー・バンドにうんざりした層に支持された。(Wikipedia

 

精神的に不健康な人間が聴いてる音楽の代名詞のような扱いをされるザ・スミス

 

僕も高校の頃から映画「ウォール・フラワー」のサントラで使われていたので存在は知っていたけど、本格的にどっぷり聴き始めたのは多分大学一年の時だった気がする。

かっこいいメロディーと情けなくてどうしようもない歌詞、モリッシーの独特な声、今では聴くたびに実家のような安心感を覚えてしまう。スミスの音楽を聴いていると、正論ばかり振りかざしてくる友達なんかに相談するよりもよっぽど安心して、寄り添ってもらってる気持ちになる。こんなに不器用な弱者に寄り添ってくれる音楽もなかなかない。

 

1. Reel Around the Fountain

 

youtu.be

君との15分間

僕は嫌だなんて言わないよ

誰も君に価値を見出さなかったけど

僕にはわかる

 

児童誘拐をほのめかしてたり、「中庭で僕をひっぱたいてくれ」と倒錯した感情もあったり、でも何より「誰も君に価値を見出さなかったけど、僕にはわかる」という部分は孤独な人間の心に沁みる。

 

2. Still Ill

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なんで?って聞いたら死んでやる

なんで?って聞いたら死んでやるからな

 

同じく1stアルバム収録。スミスの中でもギターのフレーズがキャッチーで聴きやすくて初めの方にハマった記憶がある。

 

3. Please, Please, Please Let Me Get What I Want 

youtu.be

人生でたった一度だけ

僕の欲しいものをください

神に誓ってもいい これが初めてのお願いなんだ

 

映画「500(日)のサマー」でも使われてる曲。ちなみに再生回数を教えてくれるアプリで調べたところ、僕が人生でいちばん聞いている曲がこれだった。「欲しいもの」が手に入らない人生の悲哀と、切に祈る気持ちの美しさが同居してるような感じがする。

 

4. Asleep

youtu.be

 

眠るまで歌ってくれ

眠るまで歌ってくれよ

それから僕を一人にして

朝になっても起こさないでくれ

きっと僕は死んでるだろうから

 

最後まで救いのないピアノのバラード曲。ここまで曲が陰鬱だと、自分の方が元気な気がしてくる。

 

5. I know It's Over

youtu.be

終わりなんだと分かってる

本当は始まってすらないけど

僕の心の中では全て現実の出来事なんだ

 

名盤「The Queen Is Dead」に収録。ギターのフレーズがとにかくノスタルジックで綺麗。布団をかぶってこれを聴きながら泣く弱虫みたいな1日があってもいいなと思う。

 

6.Bigmouth Strikes Again

youtu.be

あぁ、愛しい人よ

ほんの冗談だったんだ

お前なんてベッドの中でぶん殴られてしまえなんて言ったのは

 

Bigmouth(大口)で余計なことを言って必要以上に大事な人を傷つける、そんな自分に嫌気がさしている曲。コミュニケーションが下手くそな人間には共感できすぎて痛いです。

じゃかじゃか鳴ってるアコースティックギターと心地よさと気持ち悪さの間を突くような絶妙なメロディーもゾクゾクする。スミスの代表曲のひとつ。

 

 

7.Cemetary Gates

youtu.be

とてもよく晴れているから

墓地の入り口で君と待ち合わせるんだ

君の傍にはイェーツとキーツ 

 

イェーツとキーツはそれぞれイギリスとアイルランドの詩人。主人公もまた、オスカー・ワイルドの詩集を墓地に持ってきている。墓地の入り口で待ち合わせるという気味悪さも含め、文学的な世界観が好き

 

8.Heaven Knows I'm Miserable Now

youtu.be

僕の人生で

どうして僕が生きようが死のうが気にしない奴らに

大事な時間を捧げられるっていうんだろう?

 

仕事なんかしたくねえ、恋愛もうまくいかねえって腐って嘆いてる姿にやっぱりシンパシーを感じずにいられない。最初はとっつきづらかったスミスで一番初めに聴いて好きになった曲だと思う。

 

9.Panic

youtu.be

ディスコを焼き払え

DJを吊るしあげろ

奴らのかける音楽はどれも

僕の人生に何も響かないんだ

DJを吊し上げるんだ

罪状は奴らのかける音楽さ

 

「DJを吊るしあげろ」でお馴染み(?)のこの曲。軽快なリズムで「Hang the DJ」と繰り返されるのにはちょっと笑いそうになってしまう。

 

10.Handsome Devil

youtu.be

僕の手を取って

君の乳腺とその頭に触れさせておくれ 

 

ファーストシングル「Hand In Glove」のカップリング曲として収録されていた曲。一方的な支配欲と歪んだ愛情(少年に向けたもの?)を感じさせる。

乳腺はパワーワード

 

11.Last Night I Dreamt That Somebody Loved Me

youtu.be

昨日の夜 誰かが僕を愛してくれる夢を見た

希望はないけど傷つくこともない

ただの誤報だった 

 

愛される夢から醒めた寂しさをこんなにも強く感じる人間の現実なんて想像がつく。誰かと付き合っていても失恋してもきっと理想の誰かを夢見てこんなふうに寂しくなることって、満たされない人間には一生つきまとうもののような気がする。

 

12.There Is A Light That Never Goes Out

youtu.be

もし二階建てのバスが

僕らに衝突して

君のそばで死ねるなら

こんな幸せな死に方はないよ

 

最後は彼らの1番の有名曲で。スミスの中でもやっぱり頭ひとつ抜けた珠玉の一曲だと思う。

(500)日のサマーでサマーがエレベーターの中で「私もスミスが好きよ」とトムに言ってこのフレーズを歌うシーンも必見。

 

モリッシーの生き方について 

www.neatnobibouroku.info

 

 

 

川端康成「眠れる美女」を読んだ。眠った少女の横で人生を回顧する老人

たちの悪いいたずらはなさらないで下さいませよ、眠っている女の子の口に指を入れようとなさったりすることもいけませんよ

 

「男」として役割を果たせなくなった老人が、裸で眠っている若い娘たちの隣で人生を回顧するという川端康成の代表作。

新潮文庫眠れる美女の表題作であり、他にも「片腕」「散りぬるを」が収録されている。

この話に関しては三島由紀夫がすごく面白い論評をしていて、後ろの解説に掲載されているので是非それも合わせて読んで欲しい。

 

1.眠れる美女

若々しい女の肉体、肌の匂いを通して思い起こされる自分の生の記憶と迫っている死の実感。裸で眠らされている女たちに感じる性欲は、決して女たちの目に触れることのない性欲である。

老人たちにとって、女たちの反応が存在しないということは自分が男として「終わった」ということを思い出さなくて済む唯一の方法なのかもしれない。そしてそんな風に自分の現実に蓋をしたまま性的享楽に耽れるということが、江口老人含む老人たちが何度も宿に足を運んだ理由なんだろう。そして「男」でなくなった老人たちにはその性的享楽が肉体的快感を伴うものでない、観念的なもので納得するしかないのだ。

 

女たちの感応を求めない性慾を三島由紀夫は純粋性慾であり、相互の感応を前提としないという点で「愛」からもっとも遠い性慾の形だと述べている。そしてこの宿の主が「この家に悪はありません」と言っている点で、川端康成は対象を滅ぼすような「愛」が「悪」であると考えているのではないのだろうか、と。つまり老人たちの縋るような若い女の肉体への未練は「決して対象に知られない」という理由で悪になり得ないのだ。三島由紀夫「こんなに反人間主義の作品を見たことがない」と言っているが、それはこのせいだろう。悪なのは性慾そのものではなく、相手にそれを受け入れてもらい、蝕んでいくことだとこの小説の中で描かれているのだから。

 

 

老いていくことの怖さと、呼び起こされるかつての甘い体験の追憶。一人の老人の抱えた複雑な思いがこんなにも綺麗で変態的な純文学に昇華させられる川端康成はすごい。雪国では性描写が「結局この指だけが、これから会いに行く女をなまなましく覚えている」という箇所しかないというのは有名な話だけど、眠れる美女では登場する女性たちが何も話さない上に行動もしないので、その体の描写や、顔のパーツ、匂いなど肉体的な部分の描写が執拗なくらい細かく描かれている。だから、そういう意味でのドキドキ感、甘い悪夢みたいな感覚は楽しめる読書体験だと思う。

 

2.片腕

「片腕を一晩お貸ししてもいいわ。」と娘は言った。そして右腕を肩からはずすと、それを左手に持って私の膝においた。

 

こんな風に私がきれいと思うのを娘は感じていたらしく、肩の円みをつけたところから右腕を外して、私に貸してくれたのだった。

 

女が“貸して”くれた右腕と眠っていると、朝起きたら自分の右腕と娘の右腕を付け替えてしまっているという話。「右腕を貸す」という行為が当たり前みたいに書かれているので、そこを飲み込まないと全く先に進めないのだけれど、ここにあるのは会話や性行為とは違う、歪な人間のコミュニーケーション願望なのかもしれないと思った。

 

「ああっ。」私は自分の叫びで飛び起きた。ベッドからころがり落ちるようにおりて、三足四足よろめいた。

ふと目がさめると、不気味なものが横腹にさわっていたのだ。私の右腕だ。

 

悪夢を見ている感覚で言えば、眠れる美女よりもよっぽど片腕の方が強烈だった。自分でも無意識の間に相手の一部を自分のものにしてしまおうとする傲慢さ。でも私は朝起きてすぐ「魔の発作の殺人のよう」な衝動で自分の腕と娘の腕を乱暴に付け替えてしまう。つまり、自分の腕を自分の肩につけて、娘の腕を放り出す。

 

「ああ。」

私はあわてて片腕を拾うと、胸にかたく抱きしめた。生命の冷えてゆく、いたいけな愛児を抱きしめるように、娘の片腕を抱きしめた。娘の指を脣にくわえた。のばした娘の爪の裏と指先きとのあいだから、女の露が出るなら.......。

 

そして、その強い衝動の後に自分が投げ捨てた娘の腕を見て深い悲しみに沈み込んでしまう。片腕を交換することはなくとも、こんな経験って誰にでもあるんじゃないかと思う。他人の一部がいざ自分の領域に入ってくると、自分でそれを望んでいたのにも関わらず、それが気持ち悪くなってしまうこと。そして、そんな強い嫌悪感の後に、たまらなく悲しくなって、やっぱり愛おしくなって抱きしめたくなることって。それを腕の交換という視覚に訴える比喩で描かれているからやっぱり悪夢みたいに感じてしまうけど。

 

 

3.散りぬるを

滝子と蔦子とが蚊帳一つのなかに寝床を並べながら、二人とも、自分たちの殺されるのも知らずに眠っていた。

 

小説家の主人公が二人の美しい娘が山辺三郎という男に無残に殺された話の背景を想像していく話。この話で面白いのは、自分の中の悪魔と会話しながら、無意味なものに意味を見出そうとする「小説家な業」について描かれているということ。

加害者の山辺三郎は滝子と蔦子を驚かせてやろうと思って、強盗のふりして家に忍び込んだら短刀が胸に突き刺さってしまったのだと言っていたり、最後まで二人は驚いたり叫び声を上げることもなく「脅かしちゃいやよ。」と戯れるように言って、そのまま死んだと言っていた。

 

山辺自身に精神的に問題があったのか、本当のことはどうだったのかはわからないが、最後に主人公は悪魔とこんな会話をしている。

 

「ほんのたわむれだと信じて、息が止まるまで殺されると思わず、さからいひとつせず、お前の膝を枕に眠ってくれるような、そんな神仏のような殺し方がお前にできるかね。奇蹟だ、それは。」

「なんだ、それはおれが三人のために作ってやった小説じゃないか。」

「そうか。小説だったのか。」

 

そして続けてこうも書かれている。

 

悪魔に退散されてみると、私は省みて面を赤らめる。この一編は訴訟記録や精神鑑定報告に負うところがあまりに多い。私一人の小説であるかは疑わしい。しかし、文中諸所で述べたように、その記録も所詮は犯人や法官その他の人々の小説であるのだから、私もそれらの合作者の一人に加えてもらえばそれで満足である。

 

どんな記録も記述も、現実そのものと完全に関わり合うことは不可能であるということであるけど、主人公が小説として創作の殺人を作り上げたのは、三人を弔う気持ちであったということ。

 

ついでに、主人公の好きなセリフも載せておく。

「忘れるにまかせるということが、結局最も美しく思い出すということなんだな。」

 

これはいろんな出来事をいろんな形で保存できるようになった現代にも、意味を持つメッセージなんじゃないかと思う。忘却の流れに逆らって写真を撮ったり、日記をつけたりして思い出すたび現実はどんどん歪められていくし、意味のないものに意味を見出すのもそうなのかもしれないけど、それって小説家に限らず人間としての業なんだと思う。それが罪なのかは壮大すぎてわからないけど、そこにあるのはいつも悪意だけじゃないよなぁと考えさせられる。

 

 

 

 

 

レコード屋で働いてみて知った、好きな音楽を馬鹿にされるということ

コンビニで1年間バイトした僕は「バイトでも自分の好きなことと関係のあることで働こう」と思い、レコード屋でバイトを始めた。好きなものに囲まれて仕事をするのは、今までの無機質なバイトと違ってすごく心地よかった。同い年くらいの大学生も聞いている音楽が違っても、みんな音楽が好きな人たちなのでなんとなくウマがあったし、毎日毎日、新しい音楽を聴いて新しい出会いがあるのがワクワクしたし本当に楽しかった。

 

バイト先では店員が店内のBGMを店頭からレコードを持ってきてかける。僕がいるバイト先は主にロック全般を取り扱っている店で「暗くなければ基本的にはなんでもいいよ」と言われていたので、入ったばかりの僕はThe Smithsの「Louder Than Bombs」をかけた。

 

するとバイト先の30過ぎの社員がやってきて「○○さん(僕の名前)って、スミス好きなの?」と言ってきた。僕は「高校の頃から好きだったんです」と答えたが、そのあとに言われた言葉が今でも忘れられない。「えー?そうなの?モリッシーとかさ、オネエじゃんw」と、その社員は言った。

 

「はぁ。」と言ったきり、何も言えなかった。多分、うまく表情を作れず変な顔をしていると自分でもわかっていたから、それからその社員の顔を見ることもできなかった。

 

仮にモリッシーが世間から「オネエ」と分類される人間だったとして、それがなんなんだろう。「オネエ」の音楽を好きなのは不思議がられることなのか。今の一言は、自分を音楽のセンスの無い奴だと言ってるのかと、頭の中が色々ごちゃごちゃになった。

何より、そんな大して話したこともないような人間に簡単に自分が好きな音楽が踏みつけられたこと、その言葉に「The Smithsが好きな自分は音楽的センスがないと思われるのか...?」と少なからず動揺してしまった自分がとんでもなく悲しかったということだった。紛れもなく好きだったはずの音楽を一瞬でも疑ってしまったのだ。

 

バイトを始めて日数が経ってから気が付いたが、うちのバイト先には、「60年代・70年代の音楽こそが高尚なもで、80年代以降のNew Wave、インディ・オルタナティヴロックは俗であり、邪道」という空気がなんとなくだがあるらしかった。(ほとんどはその社員が元凶だとは思うが)

 

 

この間あった話だが、バイト先の先輩がNew Orderのバーニー率いるバンド、Bad Lieutenantのアルバムを先輩が店内BGMとしてかけた時もその社員がやってきて「超だせえw 変えよ」と言ってビートルズかなんかに変えてしまったのを近くで聞いてしまった時も同じくらい悲しかった。しかも「これあれっしょ?バーナード・サムナーの」と、どこか見下すように言っていたのも聞こえた。

 

僕だって正直、Bad Lieutenantがものすごく好きなわけではないけど(New OrderJoy Divisionは大好きです)、あまりにもその愛のない言い方がとにかく腹が立ったし悲しかった。前にTFCのバンドワゴネスクをかけた時もその社員に変えられた記憶がある。その時は何も言わなかったけど、そういう風に思っていたんだろうなぁと後から思った。でも仮にも年代で音楽の優劣をつけているのだとしたら、「古めかしいから芸術的」そんな見方こそ脳死的なんじゃないのかと個人的には思う。

 

何が悔しかったって、その社員の方が自分よりも音楽に全然詳しかったし精通していたということだった。高校・大学の頃からいろんな音楽を漁った僕と、10年ぐらい音楽に携わって仕事をしているその社員とは当たり前だけど圧倒的な知識差があったし、だから否定されても反論できない、と情けなくも思ってしまった。そんな風に考えた自分も結局軽蔑することになって余計に辛かった。

 

結局、ただ1人で好きな音楽を楽しみ、ほとんどの人に言わなかった時は寂しくもそれで完結していたけど、人の目に自分の好きな音楽を晒すということは、それが傷つけられるリスクに晒すということなんだということを理解した。

 

自分の好きな音楽がその畑の専門家に馬鹿にされて傷ついたとしても、その音楽を聴かないで生きていく選択肢はもう残ってないし、する気も全くない。ただ悲しくて、帰り道そのアーティストの曲を聴くと「こんなにいいものを作っているのにな」と泣きそうになってしまう。

 

詳しくなくたって何かを好きだと主張する権利はあるし、知っているからと言って、誰かの好きなものをけなしていいわけじゃない、そういう当たり前のことを好きなものを踏みにじられてやっと理解した気がする。なんでも肯定するというのは違うけど、言葉にするときは誰かにとってその好きな音楽はかけがえのないものなのかもしれない、ということを忘れないようにしようという教訓にもなった。

 

 

 

 

 

 

映画「メランコリック」を観た。憂鬱な日常に起こる非日常

メランコリック

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深夜に人が殺される銭湯を舞台にしたサスペンスコメディー。第31回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門で監督賞、第21回ウディネ・ファーイースト映画祭でホワイト・マルベリー賞に輝いた。本作で長編デビューを飾った田中征爾、主人公を演じた皆川暢二、本作にも出演した俳優でタクティカル・アーツ・ディレクターとしても活動している磯崎義知が立ち上げたユニット One Goose が製作。(シネマトゥデイ

 

あらすじ

名門大学を卒業後、うだつの上がらぬ生活を送っていた主人公・和彦。ある夜たまたま訪れた銭湯で高校の同級生・百合と出会ったのをきっかけに、その銭湯で働くこととなる。そして和彦は、その銭湯が閉店後の深夜、風呂場を「人を殺す場所」として貸し出していることを知る。そして同僚の松本は殺し屋であることが明らかになり…。(Filmarks)

 

※以下ネタバレあり

1.東大出身のエリートの憂鬱な日常 

大学を出たもののアルバイトをしながら実家に居座りふらふらしてる主人公の和彦。両親は東大を出て期待していた息子が職に就かないでいるのを不安そうに思っているけど、それを言わず優しく見守っている。何度かある親子の食事シーンはそんな気の遣い合い、探り合いで優しくも少し重たい。

そんな中、たまたま訪れた銭湯・松の湯で高校の同級生・百合に再会する。ショートカットでよく笑う快活な女の子で、フレンドリーに声をかけられた和彦は戸惑いながらも気になってしまう。(この時の和彦の話し方とか返事のズレ具合が緊張したコミュ障大学生って感じで素晴らしいのも見どころ)

結局、百合にアドバイスされてその銭湯で働き始め、2人は何度か会うようになる。奔放な百合に惹かれていく和彦。ただ、自分が一回も就職したことがなく、アルバイトのままずっとふらふらしていたことは言えないままでいた。

 

 

2.東大出身エリートの非日常な憂鬱

それから和彦はその銭湯は夜になると殺人の死体処理場として場所を貸していることを知ってしまう。そして和彦が知ってしまったということも、銭湯の管理人とそこで雇われている殺し屋の小寺にバレてしまう。そこで和彦も口封じのために死体処理を手伝わされることになっていく。

和彦は初めは死体の処理をすることに戸惑いを隠せないでいた。でも、特別手当と言われ大金をもらうとその封筒をもらい、家に帰ってからそれを見ると、一晩の死体の処理と掃除だけで大金がもらえたことに思わず顔がほころんでしまう。

それから和彦は松の湯に出勤の度に管理人に夜の仕事はないのかと聞くが、「あの時は一度だけ手伝ってもらったけど、もうやらなくていい」と言われてしまう。

しかし、ある時夜に松の湯の前を通りかかると同期のアルバイトの松本がいる。閉店後の松の湯で松本が「夜の仕事」をしていると知った和彦は怒って中に入って松本に掴みかかる。和彦は自分はもう死体処理はやらなくていいと言われたのに、同期のバイトがその仕事を任されていたことにショックを受けていた。

それからも、夜の処理の後に松本は殺し屋の小寺に呼ばれ一緒に仕事をしていたり、管理人に「昼の銭湯の業務は和彦くんがリーダーで、夜の業務は松本くんがリーダーね」と言われ和彦はプライドを傷つけられる。彼女の百合と一緒にいる時も、そのことを思い出してどこか上の空になってしまう。

 

はじめにこの映画の予告を見たときは人殺しという面倒ごとに巻き込まれ、抜け出せなくなっていく恐怖を描いた映画なのかと思っていたけど、主人公の和彦は「自分に危なくて大きな仕事が任せてもらえない」というところに劣等感を感じている。人殺しというヤバいことに関わってしまうよりもこういうことが憂鬱だったんだなあと思うと、なんだか人間の生臭さみたいなものを感じた。

 

 

3.平凡な日常へのあっけない回帰

ラストはヤクザの田中をあまりにもあっけなく陳腐な展開でやっつけて、泣く泣く別れた百合とも再会し、和彦は松の湯の雇われ店長となり、(成功した高校の同級生を経営者にする)松本たちも交えて一緒に楽しく酒を飲むというラスト。つい最近まで人殺しに関わっていたのが嘘みたいに「人生には、こんな何もかもが完璧な瞬間が時々ある」みたいなナレーションで綺麗に締めくくられた。これは違和感を持った人も多いと思うし、自分も正直ちょっと「え?」ってなった。ただ、結局のところタイトルが「メランコリック」とあるように、人生における日常と非日常、大部分の憂鬱と幸福な瞬間の波を描きたかったのかなと思う。ヤクザと関わって死体処理を手伝わされる恐怖というよりも。

 

和彦は死体処理をする度に何度か「この人はどうして殺されなきゃならなかったんだろう」と呟くシーンがある。松本には「そんなの考えてたら身がもたないっすよ」と言われるが、たくさんの人間の死んでいく様を目の当たりにして、自分自身の生と死について思いを馳せるようになったのかもしれない。

 

 

中盤までのハラハラと、笑えるところも満載だったところとクライマックスがあまりにも使い古された展開だったこと(最後の青春映画のようなナレーション含め)、このすべてのアンバランスさが斬新で楽しめたし面白かった。展開が早くあっという間に終わってしまう映画。

 

 

  

 

映画「誰も知らない」を観た。社会から隔絶された子供たち

誰も知らない

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監督:是枝裕和

出演:柳楽優弥北浦愛、木村飛影、清水萌々子、YOU

 

あらすじ

都内の2DKのアパートで大好きな母親と幸せに暮らす4人の兄妹。しかし彼らの父親はみな別々で、学校にも通ったことがなく、3人の妹弟の存在は大家にも知らされていなかった。ある日、母親はわずかな現金と短いメモを残し、兄に妹弟の世話を託して家を出る。この日から、誰にも知られることのない4人の子供たちだけの『漂流生活』が始まる・・・・・・(Filmarks)

 

1. 現実の子供を捨てる母親の姿

 

子供を捨てた、子供を施設に入れた。こういうことをする母親は世間からダメな母親だと散々言われる。実際、子供の気持ちを考えたらそう思う。YOU演じる母親のけい子も、全員違った父親の子供を4人も身ごもって、シングルマザーなのに長男の明(柳楽優弥)に下の子達の面倒を任せて遊びに行ったりしている。でも、この人を「ダメな母親だ!」って観客がただ思うだけにはならないのが、この映画の革新的なところだと思う。

「だいたい、母さんは勝手なんだよ」と長男の明に言われた時に母けい子が「私は幸せになっちゃいけないの?」と言ったのが、この映画を見て頭から離れなかった。

父親に出て行かれて、4人の子供を1人で育てることになって、お金もない。本当はいつまでも遊んでいたいし、好きな人にだって振られたくない(だから恋人に自分に子供が4人いることを言えない)。でも子供たちのことは可愛いし大切だから、一緒にいるときは愛情深く接するし、捨てた後も一応申し訳程度のお金は送る。 結局のところ、全部を選びたくて何も捨てることができないっていう気持ち。でも、これって誰にでもある感情なんじゃないかと思う。

子供を捨てたという事実だけ見て、「こいつはダメな母親だ!」って言うのは簡単だし、世の中の大多数の意見だとは思うけど、そうやって終わらせることはあんまり意味がなくて。「状況が変わったら、自分はどうなんだろう」と、映画の中の人物にあるものと自分を無関係だと割り切らないことに意味があるのかもしれないと思った。

 

 

2.親のいない生活

 

母親が百貨店で働いている間、下の子供たちの面倒を見ていた明は母親が恋人と同棲を始めてからは一日中世話をしなければならなくなる。買い物に行ったり、ご飯を作ったり。。でも、初めは申し訳程度の仕送りがあったからなんとかなったものの、それが途絶えてからはどんどんカップ麺などのインスタントの食事で済ます毎日。それぞれの父親の元を訪ねても、父親たちも経済的に苦しく、お小遣い程度のお金しかもらえない。やがてその貯金も途絶えてからというもの料金も滞納し、電気やガス、水道も止まってしまう。お風呂にも入れず、公園の水道でたまに頭を洗うだけ...。

 

本当は学校にも行きたいし、友達を作ってみんなと遊びたい。そんな思いを抑えて必死に弟と妹の世話をしてきた明。近所のゲーセンで仲良くなった同い年くらいの男の子たちと一緒遊んで、自分の家に呼んでゲームするようになるも、すぐにゲームにも飽きてその男の子たちが明から離れてってしまったのも個人的には辛かった。自分と同じくらいの友達はみんな学校に行って、制服を着て勉強して。そんな周りと比較すると、12歳の子供が毎日生きてくことの不安に脅かされてる現実は次元が違いすぎた。

 

3.次女・ゆきの死

 

明はたまたま少年野球に参加することができ、つかの間の「普通の子供」としての楽しさを味わってから帰路につくと、次女のゆきが動かなくなっていて、長女の京子と次男の茂は何もできず座り込んでいる。

死んでいるのか、生きているのかもわからず、でも子供たちで生活しているのがバレたら家族がバラバラになるから言えない。だから救急車も呼べないでいた。そして、飛行機にずっと憧れていたゆきのために、仲良くなった不良中学生の女の子紗希と明はゆきの亡骸を飛行場のそばに埋める。夜明けの飛行場でゆきを弔う明の姿は、自分の家族を埋める今の状況をどう感じて何を考えてるんだろう...と目が離せなかった。そしてそれを付き添った紗希もどんな気持ちなんだろうと。

ある自分の許容範囲を超える衝撃的な悲しさに直面した時の人間の反応は必ずしもわかりやすく泣いたり、叫んだりするものじゃない。もっとずっと複雑でカオスで理屈を超えているものなんだと、泣きもしないで、黙って体育座りをしている2人を見て思った。

 

 

4.元になった事件「巣鴨置き去り事件」

 

巣鴨置き去り事件は、1998年に東京都豊島区で発生した保護責任者遺棄事件。

父親が蒸発し、その後子供を置いて母親も出て行ったというところは誰も知らないと同じ。

ただ、三女の死亡原因が長男の友達の暴行によるものだということは映画とこの事件の大きく違うところだった。泣きやまないことに腹を立て、押入れの上から何度も飛び降りたとか。実際の事件の方も調べれば調べるほど凄惨だった。

「誰も知らない」と言われているのは、母親が初めに結婚した男が出生届と婚約届けを出すと言っていたのにも関わらず出さなかったかららしい。男に蒸発されて、母親は男遊びにのめり込むようになったとか。もうここまでくると精神的なものだと思う。ただ確かに捨てた母親の責任も大きいけど、そもそも初めの父親が蒸発しなければ一家はありふれた普通の家庭だったかもしれないし、「捨てた」という事実だけ見て母親のことだけを糾弾するのはちょっと違うなと思った。母親が関わった男たちがやることはやって捨てたのも原因だし、そういうことをされて、子供達を1人で育てなきゃならないという問題を解決するために「男に頼る」ということしか思いつかなかったからこそ依存していったのだと思う。

 

「誰も知らない」は現代の社会の通説となっているようなステレオタイプ的な見方をもう一度考えさせられるきっかけになったし、何よりカンヌ国際映画祭で史上最年少かつ日本人初めての最優秀主演男優賞を受賞した柳楽優弥の演技は本当に凄まじかった。そこには間違いなくどこかで見たことある少年の本物の温度みたいなものが宿っていたと思う。気分も重くなるし、正直見たくないものかもしれないけど、きっと「観るべき映画」なんだろうな。

 

 

Ride「Nowhere」全曲和訳 前半(Seagull〜Paralysed)

シューゲイザーの名盤と言えば必ず上がるこの爽やかな青いジャケットのRideの1st。サウンドがキラキラしてるって結構言われるけど、個人的にはすごく陰鬱な雰囲気を感じていて、そこ惹かれている部分が大きいアルバムでもある。

 

来日前に、Rideの歌詞がとてもとても綺麗なのを知ってほしくてひたすら訳した。

 

 

 

1.Seagull

My eyes are sore, my body weak

目は痛み、体は弱っている


My throat is dry, I cannot speak, my words are dead

喉が渇いて話せない

俺の言葉は死んでしまったようだ


Falling like feathers to the floor

羽みたいに床に落ちていく


Falling like feathers to the floor, ah

あぁ 羽みたいに床に落ちていくんだ


You gave me things I'd never seen

君は俺が今まで見たこともないようなものをくれたね


You made my life a waking dream but we are dead

君は俺の人生を夢みたいなものにしてくれた

でも俺たちはもう死んだんだな


Falling like ashes to the floor

灰みたいに地面に落ちていく


Falling like ashes to the floor, ah

あぁ 灰みたいにぼろぼろと落ちていくんだ


Definitions confine thoughts, they are a myth

定義が概念を確かなものにする、そんなもの全部絵空事


Words are clumsy, language doesn't fit

言葉は扱いづらくて、そんなものじゃ全然しっくりこないんだ


But we know there's no limit to a thought

でも、俺たちは考えを巡らすことには限界がないって知ってる


We know there's no limits

そこに際限なんてないと知ってるんだ


Now it's your turn to see me rise

今度は君は俺が飛び立つのを見る番さ


You burned my wings, but watch me fly above your head

君は俺の翼を燃やした

でも見てなよ 俺は君の頭上を飛んでくから

 

2.Kaleidoscope

I know that you are thinking about me now

今、君は僕のことを考えてるんだろ?


I can feel it but I don't know how

感覚でわかるんだ どういう作用なのか自分でもわからないけど


When I'm gone you will see so clear

僕がいなくなった時に 君ははっきり理解するだろう


That I left some words unspoken here

言えなかった言葉を僕がここに残してったことを

All these words that I have said float around you, fill your head

僕が言ったすべての言葉は君の周りを流れて 君の頭の中を満たすんだ


All the times we laughed and cried, I never thought I'd leave you behind

僕たちが笑って泣いたすべての時間を思えば

僕が君を置いていくなんて考えられなかったよ

I don't want you to understand

君に理解して欲しくない


You will never hold me in your hand

君はその手で僕を抱きしめたりしないだろう


I don't want you to see my face

僕は君に顔を見られたくないんだ


When I fade away and leave this place

遠ざかってこの場所を離れるとき

All these songs that fill my head dance around you when I'm dead

僕が死んだら

僕の頭の中をいっぱいにしてるすべての歌が君の周りを踊るんだ


All the love I ever knew, kaleidoscopes around to you

僕が知ってる全ての愛は姿を変えながら君のそばに

All these words that I have said float around you, fill your head

僕が発した全ての言葉は君のそばにあって 君の頭を満たすんだ


All the times we laughed and cried, I never thought I'd change your mind

僕たちが笑って泣いた全部の時間を思っても

僕が君の心を変えられるとは一度も思えなかった


All these songs that fill my head dance around you when I'm dead

僕が死んだ時

僕の頭の中をいつも満たしてる全ての歌は君の周りを踊って


All the love I ever knew, kaleidoscopes around to you

僕の知ってる愛の限りが形を変えながらずっと君のそばに存在するんだ

 

3.In a Different Place

Blowing bubbles lying down waiting for the rain to fall

風になびく泡は雨が降るのを待っている


Laughing at the people, wonder why they always rush, never slow down
いつも焦って、決して歩みを緩めない人々を不思議に思って笑いながら


And we're smiling when we're sleeping

僕たちは眠ってる時に微笑み合う


And we're smiling when we're waking

起きてる時も微笑み合うよ

Even if the rain falls down and all the sky turns cold I will feel fine

たとえ雨が降っても、空全体が冷たくなっても僕は大丈夫でいられる


Thunder roared and lightning flashed, but you and I were in a different time

雷鳴が轟き 稲妻が走る でも君と僕は別々の時間の中に生きているんだ

And we're smiling when we're sleeping

僕たちは眠ってる時に微笑み合う


And we're smiling when we're waking

起きてる時も微笑み合うよ

Floating in and out of time, in and out of space

時間と空間を出入りして彷徨っている


No one else can touch us now, we're in a different place

誰にも僕たちに触れやしない、僕たちは別々の場所にいる

 

 

4.Polar Bear

She knew she was able to fly because when she came down

彼女は落ちてきたということこそが飛べる理由だってわかっていた

 

She had dust on her hands from the sky, she said I touched a cloud

空から塵を手にして「私は雲に触ったんだ」と言った

 

She felt so high, the dust made her cry

彼女はとても気分良くて その塵は彼女を泣かせた


She knew she could fly like a bird but when she said

彼女は口に出さなければ、鳥のように空を飛べると知っていた


"Please raise the roof higher" nobody heard, they never noticed a word

「天井をもっと高くしてほしいの」

その言葉は誰の耳にも入らず、誰も気がつかなかった


The light bulbs burn, her fingers will learn

電球は熱を持ってること、彼女は指先で学ぶだろう

Why should it feel like a crime? If I want to be

どうして罪のように感じるんだろう?

僕が何かになりたいと願うことは


With you all the time, why is it measured in hours?

いつだって君といたのに

どうして時間で評価してくれないんだろう?


You should make your own time, you're welcome in mine

君は自分だけの時間を作るべきで

そうして初めて、君と僕は時間を共有できるようになるんだろう


She knew she was able to fly because when she came down

彼女は落ちてきたということが飛べる理由だってわかっていた


She had dust from her hands on the sky, she said I touched a cloud

空から塵を手にして、「私は雲に触ったんだ」と言った


Her fingers will learn, the lightbulbs burn

彼女の指先は学ぶんだ、電球は熱を持ってるってことを

 

5.Dreams Burn Down

Lying under sky laughing at everything I say

自分で言ったことを全部笑い飛ばしながら、空の下で横になっている


And pulls me under, there's no time to resist

すると下に引っ張られて 抵抗する暇もないんだ


Lying on the floor the tears are falling down and more

地べたに横になると 涙が落ちて止まらない


Her eyes speak loud but actions speak the best

彼女の目はいろんなことをはっきり物語ってるけど

でも行動より物事を語るものなんてないんだよ

Waiting, hoping for a sign

待ってるよ 合図を希望に


That what's forbidden can be mine

その禁じられたものとやらが僕のものになることを


I just want what I can't have

僕はただ、手に入らないようなものが欲しいんだ


'Til my dreams burn down and choke me every time

僕の夢が燃え尽きて、絶えず僕を息苦しくさせるまで

She's effortlessly cool but circumstances can be cruel

彼女はたやすくクールに振舞ったけど状況は残酷なんだろう


And sometimes you must accept that you can't get what you want

欲しいものが手に入らないこともあるって

受け入れなきゃならない時もある


We fill up our days and nights, we fill up the gaps in our empty little lives

僕たちは昼も夜も毎日必死になって埋めていく

空っぽの生活にあるズレを埋めていくんだ


But we know we are doomed the moment we walk out the room
でも僕たち二人で逃げようとしたら、死ぬ運命にあるって分かってる


Waiting, hoping for a sign

待ってるよ 合図を希望に


That what's forbidden can be mine

その禁じられたものとやらが僕のものになることを


I just want what I can't have

僕はただ、手に入らないようなものが欲しいんだ


'Til my dreams burn down and choke me every time 

僕の夢が燃え尽きて、何度も僕を息苦しくさせるまで

 

 

6.Decay

We have short time to stay

僕たちが一緒に居られる時間はあんまりなくて


Our night is slipping far away

二人の夜が遠くに消えていく


Caught up within bad memories

悪い思い出の中にとらわれて


Our growth seems certain to decay

僕らは成長できずに確実に腐敗していってるみたいだね

Now this feeling's so alive

今、この感情はすごく生き生きしてる


But, as you or anything, we die

でも君もいろんなものもそうだけど、僕らも死んでしまうんだ


We die, we die

僕らは死ぬんだ

Let's stay here for a while

しばらくはここにいようよ


Eyes so round and bright we gently smile

目を丸くして僕たちが優しく微笑むのを輝かせる


Live for this moment, not the past

この瞬間のために生きてるんだよ、過去のためなんかじゃない


Why do we always fall so fast?

どうして僕たちはいつもすごい速さで堕ちていってしまうんだろう?

Now this feeling's so alive

今、この感情はとても生き生きしている


But, as you or anything, we die

でも君もいろんなものもそうだけど、僕らも死んでしまうんだ

 

 

7.Paralysed 

Catch me in another dream, I'm pulled away

別の夢の中に僕は捕らえられて、引き離される

 

Hold me, gently take me through another day
僕を抱きしめて、現実とは違う1日に優しく連れて行ってよ


However hard I try, I crawl when I should fly

僕はどんなに頑張っても、飛ぶべき時に這いつくばってるだけだ


I wander through my days, pulled a million ways

僕は日々の中を彷徨ってる、幾多もの選択肢を引きつけてしまう


Help me feel the forces I can't touch, I'm reaching out

触れられないような力を感じさせて欲しい

僕は手を伸ばしている


Help me to learn until I know too much, I'm still without

知りすぎてしまうまで学ばせて欲しい

僕はまだ何もないままだから

These circles pulling near, hold me in my fear

こんな循環が近くまでやってきて、僕を恐怖の中に閉じ込めるんだ


And sleeping I can't hide, I'm paralysed inside

眠っているのに僕は隠れられないでいる

心の中の感覚が麻痺してしまったんだ