意識高い引きこもり大学生の独り言

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たかが世界の終わりを観た感想・評価ー世界の終わりよりも耐えられないこと

先日、グザヴィエ・ドラン監督の「たかが世界の終わり」を観ました!

グザヴィエ・ドランのこれまで見た作品は「マイ・マザー」「mommy」「私はロランス」「トム・アット・ザ・ファーム」などなど。。

あとドランが監督をしたわけではないですけど、「エレファントソング」も好きですね。

いや初めてたかが世界の終わりを見たのはもう一年以上前なんですけど、改めて見るとこの映画は本当にすごいなあと、驚かされた。。

家族の噛み合わない会話、一人一人が抱える複雑な問題

何もかもが人間のリアルそのもの。

 

いくら映画といっても、観念的であらゆる要素が抽象化されたわかりやすい人間がここには一人も出てこないんです。

 

以下、あらすじです。

 

 「もうすぐ死ぬ」と家族に伝えるために、12年ぶりに帰郷する人気劇作家のルイ(ギャスパー・ウリエル)。母のマルティーヌ(ナタリー・バイ)は息子の好きな料理を用意し、幼い頃に別れた兄を覚えていない妹のシュザンヌ(レア・セドゥ)は慣れないオシャレをして待っていた。浮足立つ二人と違って、素っ気なく迎える兄のアントワーヌ(ヴァンサン・カッセル)、彼の妻のカトリーヌ(マリオン・コティヤール)はルイとは初対面だ。オードブルにメインとぎこちない会話が続き、デザートには打ち明けようと決意するルイ。だが、兄の激しい言葉を合図に、それぞれが隠していた思わぬ感情がほとばしる─。(filmarks)

 ここから、ネタバレしてます!!

 

タイトルの魅力

僕がこの映画を観たいと思ったのは何よりこのタイトルに惹かれたから。

このタイトルものすごく魅力的じゃないですか? 当たり前のことを言うようだけど、世界の終わりという一大事をたかがという軽い言葉が修飾しているこのタイトルは、世界の終わりよりも絶望的なことが起こるのではないかと視聴者に想像させるんですよ。そして、この映画が終わった後にそれがどういうことなのかわかるんです。僕はここが最大の見どころなのではと思っているんですけど。

 

自分の死を告げるために帰国したルイ。空港から家に向かう途中、サントラの「Home Is Where It Hurts」がルイへの警告のようにかかる。この演出ですよ。「家なんてふらっと寄っていいような港みたいな場所じゃない。家っていうのは傷つく場所なんだ」という歌詞とこの映画の世界観はすごくマッチしているし、僕は劇場で見たけど、このシーンで観客全員に強い緊張感が走った気がする。一方、家の中はかなり暗い色調ながらも帰ってくるルイのことでみんなはウキウキしてる。実際には嬉しいというよりも、家族として喜ぶ反応が当然だと思い込んでいて、それを演じているようといった方が近いかもしれない。母も「息子が12年ぶりに帰ってくるんだから」と言いながら、漫画みたいに濃い化粧をしておめかしをしていたが、どことなくわざとらしさが拭えない。

 

この後の会話もかなり不快に感じた人は多いはず。兄のアントワーヌの奥さんカトリーヌが世間話をしても、アントワーヌが「やめろ。ルイはそんな話に興味がないのがわからないのか?」とほぼ半ギレし、ルイは「そんなことないよ、面白いよ」とフォローするがこの空間がまず地獄。アントワーヌは工場勤務で作家として海外で成功したルイにコンプレックスがあり、ルイの帰国に自分の居場所を脅かされるような予感があったはず。そして当たり前だがこの発言も到底ルイを庇って言ったとも思えないし、焦りや苛立ちが募った八つ当たりでしかない。カトリーヌはカトリーヌで夫と険悪なルイに心から親切にもできず、戸惑っているだけ。妹シュザンヌは今まで会ったことのない兄に対して盲目的な尊敬を抱いているようにも見えた。映画に描かれてなくとも、自分の才能で成功した兄の中に自分の理想の生き方のようなものを見ていたのかもしれない。「今いる場所から逃げたい」とルイに話すシーンもある。

 

そして母親。ルイがゲイであるということにも理解があるし、完璧ではなくともいい母親のように見える。僕は母がルイに言った「理解できない、でも愛してる。誰にもこの愛は奪えない。」というセリフで涙が止まらなかった。。

 

時計の針は刻一刻と進み、ルイは自分の死を宣告しなければならない時が近づいているのを感じる。だが、何か破壊的な予感を察知したのかアントワーヌがルイを無理に帰国させようとする。アントワーヌは様々な劣等感の裏返しから、誰よりも愛されることを必要とし、誰よりも今まで築いた場所に固執していたのではないだろうか。突然ふらっと立ち寄ったルイにこの「家族」という場所を壊されるのが何より嫌だったのだ。この家族は(人間みんながそうなんだろうけど)とんでもなく不器用だったし、中でもこのアントワーヌという存在は映画を観ている観客にも嫌われるほどそうだった。最後にそれぞれの感情が爆発し「どうしてこうなったの。楽しい再会のはずだったのに」と言うが仕方ない。それが人間なのだ。ある人にとっては気分のいいものでも、隣にいる人にとっては違うかもしれない。ルイは結局、アントワーヌに調子を合わせ、自分の死という重いものを一人で抱えたまま帰国することに。その時家に迷い込んで精一杯飛んだ後にあっけなく地に落ちて死んだ蝶を眺め、自分もそうなる覚悟を決めたかのようにキャップをかぶり直し家を後にする。ルイはきっとこのふらっと家に迷い込んだ蝶と自分の境遇を重ねていたのだろう。

 

そうまでして守りたかったもの、それはこの家族の愛であり、

それが崩壊するなら自分の死(世界の終わり)なんて大したことじゃなかった。

 

きっと家族を守って愛されようとしていたのは登場人物全員がそうだったはず。 

エンドロールのMobyのNatural Bluesという曲だがこの歌詞も映画の内容とかなりリンクしていて、「なんてことだ、神様以外は誰も僕が抱えている問題を知らないんだ」とかかる。選曲センスも素晴らしい。。

 

ドランはインタビューで「映画が終わると、ルイは一言も話さなかったことがわかる。」といっていたそう。

 

鬱で重たいから評価は分かれているみたいですけど、僕にとっては生涯つきまとう映画になりました。分かり合うことの難しさ、なんて言うと陳腐ですけどこういう映画に現実を投影していろんなことを考えるのもいいかもしれないです。

 

 

 

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