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映画「アンダー・ザ・シルバーレイク」を観た。夢にも恋にも敗れたオタクの人生

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目次

 

アンダー・ザ・シルバーレイク


映画『アンダー・ザ・シルバーレイク』予告編

 

全世界に未体験の恐怖を突き付け、大ヒットを記録した『イット・フォローズ』のデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督が放つネオノワール・サスペンス!

 

映画の常識を破壊してきたクエンティン・タランティーノに「こんなホラーは観たことがない」と言わしめた『イット・フォローズ』に、日本でも中毒者が続出したデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督。今度はセレブやアーティストたちが暮らすL.A.の〈シルバーレイク〉を舞台に。消えた美女を探すうちに、街の裏側に潜む陰謀を改名することになるオタク青年の暴走と瞑想を描く。

主人公のサムには、『ハクソー・リッジ』でアカデミー賞にノミネートされた、『アメイジングスパイダーマン』のアンドリュー・ガーフィールド。彼が行方を追うサラには『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』のライリー・キーオ。

デヴィッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』を頂点とする、妖しいL.A.奇譚の系譜を引き継ぎながら、幻想的な映像と天才的に斬新なアイデアで、“私たちは誰かに操られているのではないか”という現代人の恐れと恐怖心に迫るネオワール・サスペンスが登場した。

(引用:映画『アンダー・ザ・シルバーレイク』公式サイト

 

芸術家気取りのダメ人間サム

本作の主人公サムはL.A.のシルバーレイクでいい年して仕事もしていなければ家賃も滞納しているダメ人間です。働いていないけど女性には不自由していなそうなところもまたこのクズさを引き立てています。

部屋にはカート・コバーンのポスターが貼ってあり、シルバーレイクという夢を追う人間が集まる場所でサムはいわゆる負け組であることがわかります。ここら辺が悪夢版ラ・ラ・ランドと言われている理由でしょう。映画や音楽、ゲームにやたらと詳しいオタクな主人公はポップカルチャーに心酔して夢を追うものの全く成功していないのです。何を夢見ていたのかは正確には描かれてはいないですが、音楽業界を牛耳るおじいさんの言葉に憤慨しているところを見ると、おそらくミュージシャンを夢見ていたのだと思います。

 

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根暗がやってしまいがちな失恋に対する解釈

サムはプールサイドで一目惚れしたサラが失踪したことを知り狂信的に探し出そうとします。先にネタバレを言ってしまいますが、サムの元カノと犬を連れていたことなどの共通点から、サラとはサムの元彼女の幻です。そしてサラを執拗に追跡し、そのヒントを映画や暗号、本などから見出そうとするのですが、これが映画とか音楽好きの人生に対するダメなところが本当に出ています。

映画を観て、本を読んで、なぜか世界を解釈した気になる。そっちの世界に重きを置いているせいで、現実にもその虚構の領域が食い込んでくるのです。恋愛や人生の答えを映画や本の中に見つけようとするあまりその世界と自分の目で見ている世界をごっちゃにしてしまうのです。だから主人公のサムはありもしない都市伝説や街の中にある暗号が、彼女がいなくなったことに対するヒントだと思い込むのです。

最後に彼女がハリウッドで謎の宗教集団に囚われていることがわかりますが、これも本当は彼女はハリウッドで成功したことを受け入れられず、サムが勝手に解釈づけた世界の出来事です。ミュージシャン志望だったサムは自分が捨てられ、さらに彼女が成功しているという二重の辛さを伴う現実を直視できなかったわけです。

 

虚構の中で解放されるラストシーン

サラに一目惚れしたサムがラストでは初めは見向きもしなかった同じアパートのおばさんと結ばれます。そして自分の姿を俯瞰で眺めて終わるのです。完全にサラへの未練が払拭したかは謎のままですが、一瞬だけでも妄想の世界から解放されたということがこの映画の唯一の救いなんじゃないかと思います。

 

この映画に出てくるって全て「ご都合主義」なんですよね。自分で自分が知っているポップカルチャーの知識から作り上げたものなので当たり前っちゃ当たり前ですが。そんなご都合主義的な虚構の世界から解放され、おばさんと生々しい行為をするわけです。失恋を忘れる方法として、ありもしない暗号を作り出してそれに沿って彼女を探すよりよっぽど現実的だと言えます。

 

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感想

自分を苦しめていたのはカルト的に信じていた芸術なのかもしれないと忠告を受けた気分になりましたが、恋愛や人生における答えがそこにあると信じ込まないこと。そんな教訓をこの映画から学んだ気がします。主人公は恋愛と芸術を結びつけ、芸術の中からヒントを拾おうとするけど、そんなことしてないでとりあえず今身近にいる近所の人とセックスでもしてみればいいんじゃないというラスト、つまり、彼が元カノに固執することから解放され、様々な可能性があったことに一瞬でも気が付くというラストなわけです。でもだからと言ってきっと明日からサムが生まれ変わるわけでもなさそう。全てが混沌としたまま、綺麗な答えが出ないまま終わっていく。だからこそ、僕にとっては納得できる映画でした。観念的なサクセスストーリーでも、成長物語でもないからこそ僕みたいなオタク人間には最高の寓話を含んだ映画だったと思います。

 

 

2018年のベストは自分の人生にマッチした映画ということでアンダー・ザ・シルバーレイクにしました。サムのようなオタク人間には是非とも観て欲しい映画です。