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アンダーグラウンドで生きる若者たち 映画「蛇にピアス」感想・考察

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蛇にピアスはきっと完璧な映画ではないです。賛否あるのも納得だし、過激な濡れ場、痛そうなシーン満載で好みは確実に分かれる映画だと思う。

でも僕はなぜかわからないけど、この映画をたまに観て、僕の日常とはかけ離れた若者たち(と言っても同い年くらいの設定なのだが)の世界を覗きたくなるんですよね。きっとこの映画が好きな人には同じ感覚がわかってもらえると思う。

 

目次

 

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蛇にピアス」あらすじ

ルイ(吉高由里子)は渋谷の街を彷徨って生きている19歳。赤髪で顔面ピアスだらけ、トカゲのように割れた舌を持つアマ(高良健吾)にクラブで出会う。二人は名前も知らないままそのままセックスし、同棲する。

ルイとルイの友達のマキとアマの三人で飲み会をしたあと、帰り道で暴力団2人に絡まれ、アマは怒り狂い一人を殴り殺してしまう。アマはその時に殴りとった男の歯をルイに「愛の証」と言ってプレゼントする。

その後ルイは刺青を入れるためにシバ(ARATA)の元へ通う。シバはアマの紹介した彫り師でルイはアマと同じスプリットタンもシバにやってもらっていた。ルイがアマの龍とシバの麒麟を組み合わせて彫って欲しいと言うと、シバはその代金を体で払うようにルイに言い、ルイはあっさりとシバとも関係を持つ。シバはサディストだったため、アマとは違いルイに首絞めたりした。

ルイは画竜点睛の話をして「飛んでいかないように、龍と麒麟には瞳を入れないでほしい」と言う。刺青を入れるためにシバのもとに通うたびに、ルイはアマとの関係の傍らで体を重ねていた。

刺青を入れ終わり、シバとの関係がなくなるとルイは酒びたりの生活を送るようになる。「私が生きていることを実感できるのは痛みを感じている時だけ」だと思う。

ある日バイトに行ったきり、アマが家に帰ってこなくなる。ルイはアマの名前もバイト先も知らなかったのでシバの元を訪れ、一緒に捜索願を出す。アマの家でシバと待っていると、アマの死体が横須賀で見つかったと連絡が入る。死体には全身にタバコを押し付けられた痕があり、爪は剥がされ、ペニスにはお香が刺さっていた。

アマの愛情を失って抜け殻のようになったルイは、シバと一緒に暮らす。ルイはアマからもらった「愛の証」である男の歯を砕いて飲み干し、シバに龍と麒麟に瞳を入れてもらい、再び渋谷の街を彷徨う。

 

アマを殺したのはシバ?殺した理由は?

犯人は明確に断言されているわけではないですが、ほぼ間違いなくシバでしょう。アマの死体に刺さっていたお香がシバのものと一致していてルイも薄々シバが犯人だと気づいているようですし。

では犯人がシバだとしてシバを殺した理由ですが、ルイを自分のものにするためだと個人的には思いました。

刺青を入れ終わり、しばらく会っていなかったシバに呼び出されたルイは、シバに「ねえ、人殺したことある?」と聞きます。シバは「ある」と言います。「どんな気持ちだった?」とルイが聞くと「気持ちよかった」とシバは言います。また、その晩にシバはルイに「結婚しない?」と言い、自作のいかつい指輪をプレゼントします。

この日の朝、バイトに行ってからアマは帰ってこないので、この時の発言はすでにアマが殺されてからの可能性が高いです。なのでアマを殺してルイを呼び出し「結婚しない?」と言っているところを見るとルイを自分のものにするためにアマを殺したのではないのでしょうか。

 

画竜点睛の話と、ルイにとっての刺青の意味

画竜点睛の話とは?

中国六朝時代の画家である張僧ヨウが、安楽寺の壁に竜の絵を4匹描いた。だがその竜には瞳が描かれておらず、人々がその訳を尋ねると、「瞳を入れると龍が飛び去ってしまうから入れていない」と答える。人々は誰も信用しなかったが、画家に無理やり瞳を描かせると、本当に竜は壁を突き破って天に昇ってしまったという話 参考(歴代名画記)

 

ルイは孤独寂しさを何よりも恐れる女の子なのだと思います。だから、刺青の龍(アマと同じ龍)と麒麟(シバと同じ麒麟)に瞳を描かないでほしいと言ったのはアマとシバの二人を自分の元に閉じ込めておきたいという意味を込めたのでしょう。ここら辺は原作が芥川賞受賞作品ともありさすがに文学的です。

 

ルイがシバをかばった理由

アマを殺したのがシバだと分かったら、自分の大事な恋人を殺されたのだから発狂するのが普通だと思うのですが、ルイはそんなことはしませんでした。ルイはシバさえも失って誰も自分のそばにいてくれなくなるのが耐えられなかったのです。だから、証拠のお香を見つけても、違うお香を買ってきて証拠を隠蔽しようとします。ルイにとっては真っ直ぐに優しく自分を愛してくれるアマも、激しく痛めつけながらも愛してくれるシバもどちらも必要だったのであり、アマを殺したのがシバでも、ルイは孤独にならないために受け入れるしかなかったのです。

 

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ラストシーンの解釈

ラストでルイは「自分が命を持つため」に龍と麒麟に瞳を入れます。つまり、ルイは自分の中に閉じ込めていた「アマ」と「シバ」への依存から解放されようとしていたのでした。ラストでは渋谷のスクランブル交差点でうずくまるルイの姿で終わります。瞳を入れておそらくシバの元からも離れた「ルイ」がまた渋谷の暗い世界の中を再び一人で彷徨うといった意味だろうと僕は解釈します。

 

まとめ

この映画では主人公の成長や綺麗な問題解決を映画の中に求める人には辛い映画だと思います。ルイはどこまでも利己的で共感を呼べるようなキャラクターではないし、過激な濡れ場、舌に穴を開けたり、刺青したりの痛そうなシーン満載、、そして何より見終わった後にちっとも明るい気持ちにならない。

でも僕はこの映画は好きです。このアンダーグラウンドな若者たちの生き様がどこか文学的に見えてしまったり。不穏な気持ちになりたい時(?)につい観たくなります。

 

 

 

 

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