大学生の退屈しのぎ

底知れぬ音楽と映画と文学と...

大学生のうちに読んでよかった日本のオススメ文学作品の金字塔10選

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目次

 

1.金閣寺/三島由紀夫

 

 

主人公の溝口は吃音症というハンディキャップを抱えながら青春時代を過ごし、金閣に異様な執着心を抱いていた。

そんな溝口が金閣燃やすに至るまでを独白する物語。

 

臨済宗の有名な公案の1つ「南泉斬猫」(東堂と西堂の僧たちが一匹の猫について言い争っていた。しかし誰も答えを出せず、南泉和尚は猫を殺した。その話を南泉から聞いた趙州が頭の上に靴を乗せた。南泉が「お前がもう少し早くここにいれば猫を殺さずに済んだのに」と言った話)の構造に沿って話が進んでいくのも面白い。

 

この公案自体はかなり難解で、僕みたいな無教養大学生には調べてもあまり理解できないけど、小説「金閣寺」においては行動によって物事に決着をつける(猫を斬った南泉)か、認識によって物事に決着をつける(対になっている靴を頭に乗せ、二元論の止揚=視点を変え、どちらも共存させることを選んだ趙州)のか、程度に捉えておいても全然読める。

 

陰鬱な青年の内面に深く切り込んだ傑作で、高校生の時にこれを読んで、「文学」というものに初めて触れたような気がしたのを今でも覚えている。

 

あと、名文だらけの金閣寺の中でも特に好きな文「私は歴史に於ける暴君の記述が好きだった」というのがあって、ここにはみんなからバカにされている青年の静かに燃える復讐心みたいなものがあるし、劣等感を背負った少年の本質が凝縮されている。この気持ちが分かる人には小説「金閣寺」は一瞬でピンとくるんじゃないかなあと思う。

 

2.春琴抄/谷崎潤一郎

 

 

九つの時に失明したにもかかわらず琴の名手になった春琴。

そんな春琴に幼い頃から奉公人としてつけていた佐助。

春琴は鶯を愛し、音楽の才能に恵まれ、圧倒的な美貌を持っていたが、プライドが高くわがままだった。

しかし、そんな春琴が夜中に顔に熱湯を浴びせられるという事件が起こる。

火傷で爛れた自分の顔を見られることが耐えられない完璧主義の春琴の気持ちを汲み取って、佐助は自分の目に針を刺して失明させる。

愛情とも言い難い、佐助の不気味なまでの忠誠心を描いた作品。

 

谷崎潤一郎の作品はよく倒錯的な愛を描いたとかマゾヒズムだなんて形容されるけど、この小説は比較的共感しやすいのではないかと思う。

ポイントなのは春琴は目が見えないので、佐助が失明しようと確かめようがないのに、それでも本当に自分の目に針を刺して失明させているところ。

ただ、それでもプライドの高い春琴にとって、佐助に自分の醜い顔が見られないで済んだのは確実に嬉しい出来事だったはず。

本当の誠実さとか、それは本当の愛情なのかとか、そんなことを考えさせられる話。

 

3.桜の樹の下には/梶井基次郎

 

 

桜の樹の下には屍体が埋まっている!

これは信じていいことなんだよ。何故って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下には屍体が埋まっている。これは信じていいことだ。(新潮文庫 檸檬  p.188)

 

もう何も言わないのでこの冒頭を読んでほしい。この冒頭に惹かれた人は絶対読むべきだし、何言ってんだ?って感じなら読まなくていいと思う。

ちなみにこの作品自体は文庫本4ページほどの短編なので、詩集を読むようにスラスラ読めます。

 

 

4.雪国/川端康成

 

 

ノーベル文学賞をとってるくらいの人だからもちろん名作だと言い尽くされている作品なのだけど、そんなに硬い作品ではなく、大学生でも全然面白くこの小説は読めると思う。

雪国はあの有名な出だし

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった」

という出だしから始まるあの小説。

 

ざっくり言うと雪深い温泉町での島村と芸者駒子のいっときの恋愛物語

期限付きの恋愛模様独特の哀愁は映画「ロスト・イン・トランスレーション」に近いものがあるような気もする。

性描写がほぼないということでも知られるこの小説だけど、だからといってこの二人がプラトニックな関係かというと全くそういうわけでもなく、むしろその想像させる余白の部分が妙にエロかったりする。

 

ちなみにこの小説には僕の好きな場面があって、それは島村が雪ごもりの季節にその村で晒してある縮を見て、「雪で他にすることもないから、この仕事には念を入れ、製品には愛着を持ったんだろうなあ」と思っていると、その季節感から「冷たい根」を持った駒子のことを思い出す。そして「けれどもこんな愛着は一枚の縮ほど確かな形を残しもしないだろう」と、感傷にふけるところ。

すぐに跡形も無くなってしまう駒子への思いを、愛情ではなく「愛着」と表現するのがいいし、それをしっかりと形に残る縮と比較しているのも終わりを予感させる哀愁に溢れていていい。

 

5.砂の女/安部公房

 

昆虫採集のため砂丘にやってきた教師の仁木順平は、砂穴の底にある女が一人で住む家に閉じ込められる。目的は、村の労働力を確保するために、男に働かせることだった。どうにかして脱出を試みようとする男、砂穴の底に引き止めて自分の負担を軽くしようとする女、そして穴の上から男の脱出を不気味に妨害する村人たちを描いた物語。

 

この小説は好きすぎて、この本だけで記事を書いたこともあるのだけれど、これは特に大学生にオススメ。

www.neatnobibouroku.info

 

労働の本質、そしてそもそもの生活のシステムの本質に深く切り込んでいて、漠然とした将来への不安を抱えている大学生にはピンとくるものがあるんじゃないかと思う。

とはいえそんな硬い文章でもないし、男の脱出劇を描いたシーンはスリリングで、考察や何やらを抜きにしても読みやすく楽しめる。

 

6.人間失格/太宰治

 

 

「恥の多い生涯を送ってきました」

無邪気な子供を演じ続けた幼少期を描いた第一の手記、中学、そして徐々に酒や煙草を覚えていった高校の葉蔵を描いた第二の手記、高校を退学になり、本格的に破滅へと向かう第三の手記からなる太宰治の自伝的な小説。この作品の完成から一ヶ月後、太宰治は命を絶った。

 

他人を信じることができず、怯え必死に自分を偽ってきたと明かす葉蔵の半生を描いた話。

 

言わずと知れた名作。他人が理解できず、他人が自分と同じ人間であることを幼い頃から理解できず、「お茶目」に見られるため、わざと失敗をしたりすることを幼い頃から繰り返す葉蔵。それを自分で「道化」と呼び、それは「人間に対する最後の求愛だった」と言う。

 

主人公の人間に対する恐怖は最終的に主人公を女や酒、薬に溺れさせ、破滅へと向かわせるが、その根源となる思いは「他人を理解したい」といういたって普遍的な感情であるところがこの小説がこんなにも読まれ、愛されている理由なのではないのかと思う。

 

重いけど、太宰治の文体は綺麗で本当に読みやすい。僕が個人的に好きなのは怒りによって人間が突如本性を剥き出しにする様子を「牛が草原でおっとりした形相で寝ていて、突如、尻尾でピシッと腹の虻を撃ち殺すみたい」だと表現しているところ。

 

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7.海辺のカフカ/村上春樹 

 

村上春樹特有の二つの世界が交互に描かれ徐々に交わっていくという手法をとった長編小説。

 

主人公の「田村カフカ」は15歳の誕生日に「世界で一番タフな15歳の少年になる」と決意し、家出をする。

引き寄せられるように四国にたった一人で行き、その町にある図書館に住むことになる。

 

もう一つの物語は幼い頃に事故によって読み書きの能力を失ったナカタさんを中心に進んでいく。彼は猫と話せるため、猫探しをしながら細々と生活している。

 

彼らの物語はジョニー・ウォーカーという猫殺しの老人の存在によってどんどん交わっていく。

 

主人公田村カフカには「カラスと呼ばれる少年」という自分の分身のような存在がいて、その少年と対話しながら自分の気持ちを探っていくという書き方も面白いし、家出をした15歳の少年が図書館で様々な本に出会ったり、一人で音楽を聴きながらジムに通うシーンなども読んでいて楽しかった。村上春樹の作品の中でも1、2を争うくらい好きな作品。

 

8.何者/朝井リョウ

 

 

直木賞受賞作で就職活動を始めた大学生4人を描いた物語。

それぞれ目指している企業やなりたい職があり、協力しながら就活を進めていくが、そんなことをしているうちに主人公であり語り手の拓人はそんな友人たちをだんだん冷めた目で見始める。それは「就活なんて興味がない」と言っているような人が裏では必死で情報収集したり必死になっていたり。行きたくもない留学やインターンに精を出しているのを見ているから。

また拓人はギンジのことも意識しながら就活を進める。ギンジとはかつて同じ劇団で演劇をやっていた仲間だが、ある日、大学もやめて就活もせずに自分で劇団を立ち上げると言い出した友人で、ブログやツイッターで自分の努力を発信し続けている。そんなギンジのことも拓人は「勘違いしている」と見下している。

 

さて物語はこんな感じなんだけど、SNSをやっている大学生ならおそらくホラーに感じるくらい思い当たる節があるのではないかと思う。そしてもちろん就活の怖さというのは、それが自分の内面まで値踏みされていく場のような気がしてしまうところだ。

 

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何者かになりたくてあがいている大学生。ちょっと前に「意識高い系」なんて言葉が流行ったけど、そんな風に他人を馬鹿にしている人たちに対して「じゃあそんなかっこ悪くあがくことすらできない自分はどうなの?」って問いかけるような話。

登場人物たちのツイートとかも出てくるのだけど、これがまたリアルで恐ろしい。SNSの発達でどこか物事を俯瞰で見ることばかり覚えて、観察者として他人を見下して、肝心の自分と全く向き合えない拓人の姿は正直自分と切り離せなくて痛いほど刺さった。。

 

9.木洩れ日に泳ぐ魚/恩田陸

 

 

明日から別々に生きていくことを決めた男女が語り明かす最後の夜を描いた物語。

男女交互の視点で語られる構成のせいなのか、自分の発言が相手にどう捉えられていたかとか、恋愛観の違いとかの人間ドラマとサスペンス要素が絡み合っていて面白い。

ストーリーがしっかり構成されていて、様々な伏線を経て謎が明かされていく系なので、読み出してしまえば後半は一気に読んでしまいたくなると思う。

 

10.蒲団/田山花袋

 

「蒲団に残るあのひとの匂いが恋しい」

3人目の子供を授かった妻を持つ文学者の時雄が、そこに弟子入りしてきた若い娘芳子に激しい恋心を抱く話。

時雄はもう三十半ばであり、新婚の喜びも消え去って、平凡な毎日にどこか飽き飽きしていた。芳子はそんなところに現れたのである。だが芳子にも秀才な恋人がいることを知り、時雄は苦しみに悶える。

 

自然主義文学の金字塔的作品で、こんなにも恋愛をみっともないくらい赤裸々に語っているのにそれでも文学になるんだからすごい。

恋愛の苦しみをありありと追体験できるのと、なんかこの主人公の振られた後に好きな人がいた蒲団を思いっきり嗅いでしまう情けなさがたまらない作品。 

 

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よければこちらに海外の作品編もあるので合わせてよろしくお願いします!

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