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好奇心で近付く残酷さ。映画「ジョゼと虎と魚たち」感想・解説

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ジョゼと虎と魚たち(2003年)

監督:犬童一心

上映時間:116分

出演:妻夫木聡池脇千鶴上野樹里、江口徳子

 

目次

 

あらすじ

恒夫(妻夫木聡)は、雀荘でアルバイトをしている大学生。最近、卓上で話題になっているのは近所に出没する婆さんのこと。婆さんはいつも乳母車を押して歩いている。

恒夫はある日、偶然乳母車に乗っているその少女に会った。それが、ジョゼ(池脇千鶴)との出逢いだった。(https://ja.wikipedia.org/wiki/ジョゼと虎と魚たち

 

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誰にでも優しい大学生(以下、ネタバレ含む)

 

妻夫木聡演じる大学生の恒夫は、友達も多く誰に対しても優しい大学生。

 

ノリコというサバサバしたセックスフレンドがいて、大学では香苗という同級生とも就職の相談がきっかけで仲良くしている。

 

一方ジョゼは足が悪く外の世界を何も知らないため、押入れの中でおばあがゴミ捨て場から拾ってきた本ばかり読んでいる女の子。恒夫とは何も接点がないはずだったが、乳母車に乗っているジョゼに出会って、「おばあ」に朝ごはんをご馳走になったことで知り合う。

 

恒夫はどういうわけだか彼女にも惹かれ、何度もジョゼの家に通う。

そのうち恒夫はジョゼの面倒を見るようになる。スケボーで昼間の散歩に連れ出したり、家をバリアフリーにする工事を勧めて決行したり。悪意のある言い方をすれば、恒夫は土足でジョゼとおばあの二人の世界にズカズカと入っていくのだ。

 

最初は自分だけの一人ぼっちの世界に閉じこもってばかりのジョゼだったが、次第に優しく自分に接し続けて世話してくれる恒夫に惹かれ始める。

 

ある日工事の時に香苗と恒夫の会話を聞いてしまう。足の悪いジョゼは部屋の椅子から降りるときも飛び降りるようにするしかなかったのだが、それを香苗が嫌味のようにジョゼのいるところで話したのだ。「彼女やろ?お部屋のあちこちからダイブしよるって。私もいっぺん見たいなあ」と。

 

こんな風にジョゼのことを言った恒夫も恒夫だけど、これは酷すぎた。。当然これ以来、恒夫がジョゼを訪れると、ジョゼに本を投げつけられ、そんな様子のジョゼを見て全てを察したおばあにも「もう帰ってくれ」と言われる。でもこの行動からわかるのはジョゼはもうこの時すでに苦しいくらい本気で恒夫に惹かれてたということ。

 

 

住む世界の違う恋愛

 

おばあに「帰れ」と言われて以来疎遠になったジョゼと恒夫。恒夫は就職活動に励んでいた。

 

しかし、恒夫はおばあが死んだという知らせを聞いて再びジョゼの元に向かう。家の中は人が一人いなくなり以前にも増して閑散としていて暗かった。

 

ジョゼはおばあがいなくなってから近所の変態おじさんに胸を触らせることでゴミ出しを手伝ってもらていると言う。それを恒夫が咎めると、「関係ないやろ、帰れ!」とジョゼは言う。

でも、それは嘘だった。本当に帰ろうとする恒夫にジョゼは「帰れって言われて帰ろうとする奴は帰れ!」と泣きながら言う。

 

ジョゼの本心を知ってそのまま関係を持ち付き合うことになる二人。

「うち好きや、あんたも、あんたのすることも」とジョゼ。

 

二人の交際はとりあえず順調だった。一緒に動物園にも行ったし、旅行に出かけ、そこでの法事で恒夫はジョゼを親に会わせる予定も立てていた。

 

しかしいざその旅行に来ると、目当ての水族館がやってなくて駄々を捏ねていじけて叫んだり、車椅子を使おうとせず恒夫にずっとおんぶしてもらったり、運転してるのにしつこく話しかけてくるジョゼにだんだんイライラが募り始める。

 

「このまま本当にこんな「普通」じゃないジョゼとこの先もいられるのだろうか...?」恒夫は将来が不安になる。

弟に電話し、「仕事でいけなくなった」と嘘を吐いてジョゼを親に会わせるのを中止にする恒夫。弟に「兄ちゃん、怯んだと?」と言われ何も言い返せない。

 

二人はその晩「お魚の館」というラブホテルに泊まる。

ジョゼは恒夫に言った。「なあ。目ぇ閉じて。...そこが昔うちがおった場所や。深い深い、海の底。いつかあんたがおらんようになったら、迷子の貝殻みたいに一人ぼっちで海の底をころころころころ転がり続けることになるんやろ...?」

 

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その後数ヶ月して二人は別れた。恒夫は自分で別れの理由は「僕が逃げたこと」だったと振り返る。そして別れたその足で恒夫は香苗と会いに行く。ちゃんと描かれてないけど、この会い方的に、恒夫はジョゼと付き合う傍で香苗とも関係を適度に保っていたような気がする。

 

結局また一人ぼっちに戻ったけど、車椅子で一人で買い物をし、身の回りのことを誰にも頼まないでこなしているジョゼの姿は胸を打つものがある。

 

 

八方美人が撒いた種

 

上野樹里演じる香苗ちゃんが強烈すぎてびっくりした人多そう。

ジョゼと道端で会った香苗が「正直、あなたの武器が羨ましいわ」と言うと、「ほんまにそう思うんやったら、あんたも足切ってもうたらええやん」とジョゼが言う。そしてそんなジョゼを二回強めにビンタする香苗ちゃん。(この子が福祉関係に就職したいという設定なのもやばい)

後日、香苗は恒夫に「あの子のこと殴ってん」と打ち明ける。

「だって許されかってんもん。障害者のくせしてあたしの彼氏奪うなんて、どういうこと?って。心底、殺してやりたいくらいムカついてたわ」

 

こんな最低なことを言う香苗のことも責めないで優しく笑う恒夫。ジョゼが香苗にビンタされたことを恒夫に黙っていたのも、恒夫が自分だけじゃなくて香苗にも良くしていることをなんとなく見破っていたからだと思う。

 

ただ、香苗をこんな嫌な女にしてしまったのも、恒夫が八方美人すぎたからと思うのは僕だけなんだろうか。恒夫がもっとはっきりと自分の立場を示していたら、香苗だって期待嫉妬もしなかったんじゃないだろうか。

 

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好奇心による恋愛感情の限界

 

結局のところ、恒夫は恒夫でジョゼのことを好きだったはずだし、大事にしているように思える場面もいくつもあった。でも多分恒夫は、単なる好奇心と正義感と恋愛感情を全て一緒くたにしていたような気がする。

 

恒夫はやっぱり身体障害のある彼女との人生を選ばなかったけど、現実的に考えたらそれを責めることのできる人もいないはず。そしてそのまま「普通」の女性である香苗の元に行ったとしても。

 

この映画はそんな人生のリアルな選択をまざまざと見せてくれる。恒夫はずるく、愛される喜びを教えてからジョゼを一人の世界に戻すなんて残酷すぎると思う。でも、じゃあ恒夫は悪者で完全な嘘つきだったのかというとそうじゃない。恒夫は恒夫なりにジョゼを大事に思ってたはず。やっぱり恋愛なんて所詮は感情だけで結ばれているものなので責任なんて負いようがないのかも、なんてことを考えさせられる。

 

まとめ

 

かなりえぐい映画だったけど、アタリの邦画だったと思う。キャストもハマりまくってたし、くるりの音楽も良かった。

 

邦画のいいところはこういう生々しい恋愛をリアルに感じれるところだと思う。洋画の恋愛よりも、やっぱり自分たちの価値観と一致しているから自分の人生に置き換えやすい。

 

とにかく池脇千鶴の演技がすごかったな。情緒不安定な女の子を完璧なまでに演じてた。これだけでも一見の価値があると思う。

 

 

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