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映画「レクイエム・フォー・ドリーム」あらすじ感想 夢への鎮魂歌

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レクイエム・フォー・ドリーム

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監督:ダーレン・アロノフスキー

出演:ジャレッド・レトエレン・バースティンジェニファー・コネリーマーロン・ウェイアンズ

 

レクイエム・フォー・ドリーム』(Requiem for a Dream)は、2000年のアメリカ映画。普通の生活をしていた人々が、ドラッグにより崩壊してゆく様を描いた衝撃作。原作は脚本も手がけたヒューバート・セルビー・ジュニア の小説『夢へのレクイエム』(Requiem for a Dream)。

エレン・バースティンがインでペンデント・スピリット賞主演女優賞受賞、アカデミー主演女優賞にノミネート、ジェニファー・コネリーがインでペンデント・スピリット賞助演女優賞にノミネートされた。2009年にイギリスの映画雑誌「エンパイア」が発表した「落ち込む映画」ランキングで第1位に選ばれた。(Wikipedia

 

 

「レスラー」「ブラックスワンなどを手がけたダーレン・アロノフスキー監督の最強の鬱映画です。指定は多分R15なのかな。特別にグロいシーン、エロいシーンがあるわけじゃないけど、精神的にどん底に突き落とされます。

夢に向かって進もうとしていたはずの4人がドラッグによって思わぬ方向に転落していって、気づいたら夢どころかすぐそこに存在していたはずの当たり前の日常さえどこか遠い桃源郷のように思えてくるという、この映画の最大の恐怖はそこなんじゃないかと思います。「ああ、もう戻れないんだ」という怖さ。

 

序盤だけ見て「こんな風に好きな人とアンダーグラウンドな世界でドラッグやるのもいいな」なんて一瞬でも思ってしまった自分を即座にぶん殴りたくなりましたね。ドラッグ、ダメ、絶対です。

 

 

 

 

 

順調だった始まり(以下ネタバレあり)

舞台はニューヨーク。ハリー(ジャレッド・レト)は母親で未亡人のサラ(エレン・バースティン)から唯一の楽しみであるテレビを取り上げて勝手に売り、悪友のタイロン(マーロン・ウェイアンズ)とドラッグを手に入れハイになっています。

サラはなんとかテレビをハリーが売った先から取り返し、またテレビ漬けの生活に戻ります。売った先の店員とも顔なじみになっていて、「息子のこと訴えないのか」と言っていることから、ハリーとサラは同じことを何回も繰り返しているのがわかります。

そんなある日、サラは大好きな視聴者参加型の番組から出演オファーの電話がかかってきます。初めは戸惑うも喜びを隠せないでいるサラ。サラはハリーの卒業式に夫と3人で写っている写真を見つけ、その時着ている真っ赤なドレスで番組に出演したいと思うようになりました。

一方でハリーはタイロンと麻薬の密売に手を出し、味をしめていきます。恋人のマリオン(ジェニファー・コネリー)の洋服屋を開きたいという夢に向かって資金を貯めようとしたのでした。

 

転落の兆し

サラは番組出演のためにドレスを出して着てみますが、体型も変わってしまい痩せないと背中のチャックが閉まらないことに気がつきます。ダイエット番組を見て食事に気を遣うサラ。しかし我慢しようと思っても食欲は湧き上がってくるばかりで簡単に痩せることはできません。

そんな中近所の友人たちと話しているとダイエット・ピルで一気に簡単に痩せたという話を聞き、サラもダイエット専門の病院に通うことを決意します。そこで処方されたのはダイエット・ピルという名のドラッグでしたが、痩せてドレスを着て綺麗な姿で番組に出演することだけを夢見るサラはそれがなんなのか気づいていません。どんどん痩せていきドラッグの量も増えていきます。ハリーとマリオンの生活もだんだんドラッグが中心となっていくのでした。

ある日サラを訪れたハリー。痩せてドラッグが効いているせいか気分よくもてなしてくれます。そんな様子と「医者からダイエット・ピルを処方してもらっている」と聞いたハリーは自分が薬物をやっているのもあって合点がいき「危険だからやめてくれ」とサラを説得します。しかし綺麗になって番組に出演することだけが生きる意味となっていたサラにもうその言葉は届かないのでした。

ハリーとマリオンの生活もだんだんおかしくなっていきます。ハリーが薬物を手に入れられなくなってくると、マリオンはイライラしハリーと口論になってしまいます。ハリーは「ここに連絡して自分で薬を手に入れろ」と売人の電話番号をマリオンに渡します。

 

結末

季節は変わり、ドラッグの使用量が増えて幻覚を見始めるようになったサラ。真っ暗な部屋の中で冷蔵庫はかたかたと音を立てて動き出し、テレビの中の人間がテレビから飛び出して部屋にやってきます。そこにあったのは異様な世界です。そしてサラは更に瘦せ細り、髪も服もボロボロの狂人のような姿でテレビ局に乗り込み「番組に出るの」と繰り返しているところをそのまま精神病院に連れて行かれてしまいます。

マリオンはハリーから連絡先を教えてもらった売人に電話し、体を売ることで薬物を手に入れます。そして更にドラッグを手に入れるために金持ちが主催しているパーティーに行き、皆の前で性行為をし見世物になります。ドラッグ欲しさにもう何も感じなくなっていたマリオンはやっと手にしたドラッグを大事に抱え胎児のような姿勢で眠るのでした。

強制労働所に連れて行かれたハリーとタイロン。タイロンは母親の夢を見ながら禁断症状に苦しみ、ハリーは労働できないほど注射の打ちすぎで腕が壊死していたので病院に連れて行かれます。その病院でマリオンの夢から目覚めると、腕はもう切断されていてありませんでした。

精神病院で荒治療を受けるも全く良くならないサラ。電気ショック治療の同意書に訳がわからないままサインしてしまい、そのまま廃人になってしまいます。

 

 

 

感想

若者たちはともかく気づいたらドラッグ漬けだったサラは見ていて同情を禁じ得なかったです。電車で一人でずっと知らない人に話しかけたりしていても相手にされなくて、見舞いに来てくれた友達も認識できなくなっている最後も彼女に落ち度はないんですから。(強いて言うなら、ハリーのアドバイスを聞かなかったことでしょうか)彼女は人の温かみを失って寂しくて刺激に飢えていただけなんだと思います。最愛の夫を亡くし、息子のハリーもなかなか帰って来ない毎日で、近所には上っ面の会話しかできない友人しかいなくて健全に満たされる人間がどこにいるんでしょう?

 

この映画を観てから電車で一人で喋って皆にクスクス笑われて動画を撮られたりしている人を見ても、絶対にそんなことしちゃいけないんだと改めて思いました。だって自分やその家族がそうなる可能性だって否定できないし、この人にもサラみたいにどこかでこんな転落の罠に引きずり込まれてしまっただけなのかもしれないと、恥ずかしながらこの歳になってやっと痛感しました。

 

ハリーの腕が無いのが映し出されるところ、鳥肌立つくらい怖かったです。サラの幻覚の世界も相当怖かったですが。ブラックスワンと言い、人間の異様な心理状態をホラーテイストに昇華するのがこの監督の得意とする演出なんでしょうか。とにかく精神的余裕があれば観て損はないないんじゃないかと思います。落ち込みますが傑作であることは間違いなしです。