大学生の退屈しのぎ

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宮沢賢治「よだかの星」感想 星になれた嫌われ者ときのこ帝国の話

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 よだかは、実にみにくい鳥です。
 顔は、ところどころ、味噌みそをつけたようにまだらで、くちばしは、ひらたくて、耳までさけています。
 足は、まるでよぼよぼで、一間いっけんとも歩けません。
 ほかの鳥は、もう、よだかの顔を見ただけでも、いやになってしまうという工合ぐあいでした。

 

醜い容姿のせいで周りから疎まれていた夜鷹が星になれるまでの話。

 

嫌われ者のよだかは、他の鳥たちにもいじめられ、あるとき自分と名前が似ていることがずっと気に食わなかった鷹に「名前を市蔵に変えろ」と脅される。「神様にもらった名前なのでそれはできません」と言うも、「明日までに変えないと殺す」とよだかは言われてしまう。

 

悲しみに暮れながら空を飛んでいると自分の喉の中をカブトムシがばたばたと暴れるのを感じて、自分は今までこうやって数々の生き物を殺してきたんだと気づかされる。もうどんな生き物も殺したくない、そんな風に思ってよだかは大声で泣いてしまった。

 

ああ、かぶとむしや、たくさんの羽虫が 毎晩僕に殺される。そしてそのただ一つの僕がこんどは鷹に殺される。それがこんなにつらいのだ。ああ、つらい、つらい。僕はもう虫をたべないで飢えて死のう。

 

最後かもしれないと思い、よだかは弟の川せみの所に会いに行く。そして「僕は遠くに行ってしまう」「いたずらに魚をとったりしないでおくれ」と伝えた。

 

よだかはその夜、遠くの星になりたいと願う。「あなたのところへ連れて行ってください」と色んな星々に頼むも、「お前はよだかだろう」と相手にされずばかにされ否定され続ける。

 

みんなに断られ続けた夜鷹は高い叫び声をあげて、まっすぐ空をのぼっていく。でものぼってものぼっても星のもとへは届かず、泣きながら空を見上げ死んでしまう。

 

しばらくたってよだかが目を開けると、自分の体が青白い光を発して、燃えているのに気が付く。すぐ隣にはカシオペア座が輝いていた。

 

 そしてよだかの星は燃えつづけました。いつまでもいつまでも燃えつづけました。

 今でもまだ燃えています。

 

 

 

プラネタリウムで聞くような悲しい星の神話みたいな話。数ページしかないけど、でもここには神話的じゃない「殺すことなしでは生きられない」、殺生という業を再考させられるものもある。自分が今まで殺してきた生命に思いを馳せて、「自分さえいなくなってしまえば」と考えるよだかは、みんなから醜いと言われていても本当に綺麗な心を持っているなと思った。そしてその食物連鎖から抜け出すための手段は宮沢賢治の世界では「星になること」でしかないんだろうなぁと。

 

よだかは、自分の力で星のところへたどり着いたわけではなくて、飛んでも飛んでも星のところにはまるで届かないままぼろぼろになって死んでしまう。そして気が付くとそのあとに自分が星として燃えているのを感じたという流れ。

 

よだかがどうして星になれたのか、個人的には「よだかの綺麗な心を見てた神様が願いをかなえてくれた」という解釈よりも、せめてもの救いを描いた「願望」なんじゃないかと感じた。外見だけがモノを言い、口がうまくて人を笑ったり、自分のために他の生き物を殺しても気にしないような人間が地上では勝ってしまうかもしれないけど、空に輝いている星は地上では報われなかった綺麗な生命の炎だと思いたいという宮沢賢治の切実な願いなんじゃないかなと。(宮沢賢治は虫も殺せないほどの人だったとか)

 

神様がいるなら、いじめられて傷ついたよだかをもっと前に救ってほしかった、というのはもちろんよだかに自分を重ねた僕の願望でしかないけど、どうしてもそう思ってしまう。

最後のラストが救いであることに間違いはないんだけど、ただ「星になれたこと」が救いというよりは、よだかが死んでも星になれたのを認識できたことが一番の救いなんじゃないかという気もする。

 

 

夜鷹

夜鷹

  • きのこ帝国
  • ロック
  • ¥200
  • provided courtesy of iTunes

 

余談だけどきのこ帝国に夜鷹という曲があり、これはこの話がモデルになっている。「ティコの星」はカシオペア座のとなりにあり、後ろに天の川という本文からもよだかの星のモデルになったと言われてる星でもある。

細胞分裂をやめられない」「殺すことでしか生きられない」「笑うあいつの目の奥は汚れている」「無数の悲しみとともに、すべてを夜へ」などこの話と完全にリンクする歌詞もあって、改めて「よだかの星」を読んでから聞いてみると面白い。ちなみに星巡りの唄は「双子の星」「銀河鉄道の夜」にも出てくる。この死の匂いがする鬱屈とした世界観は「よだかの星」を読んだときに感じたやるせなさに寄り添ってくれる曲だなぁと改めて思った。

 

▽「よだかの星」「セロ弾きのゴーシュ」そして表題作の「銀河鉄道の夜」収録されてます。