大学生の退屈しのぎ

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映画「太陽を盗んだ男」感想 退屈だから原爆を作った物理教師の話

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太陽を盗んだ男(1979)

監督:長谷川和彦

出演:沢田研二菅原文太池上季実子

 

あらすじ

中学校の物理教師、城戸誠(沢田研二)が原子力発電所からプルトニウムを盗み出し、自力で原爆を完成させる。そしてその原爆を使い政府に「ナイターを最後まで見せろ」「ローリング・ストーンズを来日させろ」などと要求をするようになる。

 

刺激のない日々に訪れた変化

中学校で物理を教えている城戸誠のクラスは、ある日バスジャックに巻き込まれる。

「死」に対する恐怖感もあまりなく、非日常を心のどこかで楽しんでいる誠はそこで出会った刑事、山下(菅原文太)とともに捨て身の行動をし、生徒たちの命を守ることに成功する。

 

ある日、誠は原子力発電所からプルトニウムを盗んでくる。(このカットはどことなく2001年宇宙の旅っぽく見える)

そして自宅で実験を重ねてついには完成させてしまう。

 

脅迫を始めるも要求が思いつかない

原爆が完成し、まずはバスジャックの時に出会った山下に連絡し「野球のナイターを最後まで放送しろ」と要求する。誠はその要求を飲ませることになんとか成功し歓喜する。「俺は9番だ」と山下に名乗る。誠は核の保有国が8つで自分はその9番目という意味だと説明する。

 

要求が思いつかなくなってしまった誠はラジオで「原爆を持ってるんだが、なんでも叶うとしたら何がしたい」と質問する。ラジオDJの沢井零子が「ローリング・ストーンズ来日公演なんてどうかしら」と言うと、次の要求をそれに決め山下に連絡する。

 

ちなみに、原爆が完成したことにより部屋の中で踊り狂う誠のバックでBob Marleyの代表曲「Get up, Stand up」が流れるシーンがあるが、この曲は「自分たちの権利のために立ち上がれ」「戦いをあきらめるな」と歌われており、明確な目的を持って戦うわけではない誠に対する痛烈な皮肉になっている。

 

 

 

最後の要求と転機

ストーンズの公演が決定し新聞でも報道されると、誠は次に原爆製造のために作った借金の返済を迫られたため五億円を要求する。

しかし電話の逆探知でデパートの屋上にいることが警察にばれてしまい、デパートは封鎖され誠は閉じ込められる。

「原爆のスイッチの切り方を教えるから封鎖を解け」「五億円を屋上からばらまけ」この二つの指示により、誠はなんとか群衆の中に紛れ逃げ込むことに成功する。現金がばらまかれ通りはパニックになっていた。

 

ビルの窓ガラスを割って侵入し原爆を再び取り戻した誠は車で暴走してなんとか逃げ切り、また起爆装置を入れる。

 

ローリング・ストーンズ公演の日、山下は誠に銃をつきつけられ屋上へと向かい、二人は直接対決する。銃弾を何発も浴びた山下は誠を引きずり転落。しかし、生きながらえたのは誠だけだった。

原爆を抱えながらよろよろと歩く誠。放射能を浴びて自身の体も蝕まれていく。やがて30分が経過し、原爆は爆発する。

 

感想:虚無感と孤独とコミュニケーション願望

誠は結局何がしたかったのかというと、何もない。ただ、漠然と社会と関わりたかったのかもしれないし、誰かと話したいという気持ちがあったのかもしれない。あるいはもっと漠然と持て余していた精神的なエネルギーを爆発させたかっただけなのかも。でも動機もないテロに強く人間味を感じてしまったなぁと思う。

原爆というテーマを扱っておきながら、原子力発電の賛否とか、そういうものが全くなかったのもなんだか良かった。社会に対しての反抗的な姿勢よりも、ひたすらに孤独で暴走する人間の孤独や虚無感を垣間見れたという感触の方が強い作品だった。