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映画「アースクエイクバード」感想 日本を舞台にした不穏な三角関係の話

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アースクエイクバード

監督:ウォッシュ・ウエストモアランド

製作総指揮:リドリー・スコット

出演:アリシア・ヴィキャンデル、ライリー・キーオ、小林直己

 

舞台は1980年代の日本。ルーシー(アリシア・ヴィキャンデル)は写真家の禎司(小林直己)と恋に落ちるが、彼女は友人リリー(ライリー・キーオ)と禎司の関係性に疑問を持ち悩んでいた。やがてリリーは行方不明になり、ルーシーは殺人の疑いを警察からかけられる...という話。

 

この映画の魅力はやっぱり小林直己の危うさ全開の色気にあると思う。高身長で流暢な英語を話し、写真を撮ることに熱中している姿はめちゃくちゃかっこいいし、EXILEの人だということも観終わってから調べるまで分からなかったぐらい芝居で負けているなんてこともなかった。

 

アリシア演じるルーシーは5年以上日本に在住しているという設定であり、服装や性格がしっかり日本人に染まっているのが印象的だった。外国人が描く日本はめちゃくちゃなことも多いけど、この映画はそういうところは全く感じなかった。原作者のスザンナ・ジョーンズが日本在住経験があるというのも大きいのかもしれない。

 

 

 

1.詳しいあらすじ(ネタバレあり)

 

話は事情聴取過去の回想の二つの場面で展開していく。

 

東京湾で上がった女性の死体がルーシーの友人リリーである可能性があり、最後に会ったのがルーシーということでルーシーは警察に詳しく話をしなければいけなくなったのだ。

 

回想シーンは禎司との出会いから始まる。

 

街の中でいきなり写真を撮られるルーシー。振り向くとそこにカメラを持った男がいた。「許可とるべきじゃない?」とルーシーは言う。「許可はとらない。その瞬間を逃すから」と禎司は言う。

 

禎司はその後も自分の秘密の撮影場所のようなところへ移動しルーシーを撮り続け、ルーシーはだんだんと禎司を好きになっていく。

 

その後、ルーシーは知り合いのボブに日本に来たばかりのリリーを紹介される。リリーは日本語もほとんど話せないため住むところも探せず困っていた。ルーシーは断ろうとするが、結局住む場所を一緒に探したりルーシーの面倒を見ることになる。

 

ルーシーは同僚の姉がクラブで演奏するから新宿に行かないかと禎司を誘う。そこにボブとリリーも来るが、リリーと禎司が楽しそうにクラブで踊る姿を見てルーシーは不安になってしまう。

 

その後3人は佐渡島に旅行に出かけるが、明らかにルーシーと禎司・リリーの構図になっている。夜ご飯を食べた先でも禎司とリリーで盛り上がっているし、朝ご飯の席も2人の前にルーシーが座っており、ルーシーと禎司がカップルなら不自然すぎる。夜の寝る位置もリリーが真ん中で禎司とルーシーがそれを挟むというのもおかしい。

さらに極めつけは尖閣湾で2人がそそくさと先に歩いてしまい、途中でルーシーが嘔吐しても声を発するまで全く気が付かない、そして具合が悪く山の上に寝かせていたルーシーを置いてけぼりにして別の場所へバイクで向かってしまっていること。

 

なんとかルーシーは2人を見つけ出し問いただすもリリーは「メモを置いておいた。きっと風で飛ばされた」と言い訳する。旅行は不穏のまま(禎司がなんとか誤魔化すが)ルーシーの心の中の疑念は確信に変わっていた。

 

その後、リリーがルーシーを訪ねる。リリーは「ひどいことをした」と謝るが、たった一人の理解者である禎司を奪われたルーシーは許せないでいた。ルーシーはリリーを追い返すが、その後を追いかける。しかし警察署で初めに話した通り、ルーシーはリリーを見失ってしまっていた。

 

その後、東京湾で上がった遺体はリリーのものではないと発覚しルーシーは警察から解放される。そしてリリーがどこへ行ったのか気になったルーシーは禎司の「撮影部屋」に行きリリーの写真を何枚か見つける。その中には恐怖で怯えている顔を撮ったものもあり、やがて死体となってる1枚を発見する。

 

ルーシーが自宅に帰るとそこには禎司がいた。一緒に逃げてくれないかとルーシーに言う禎司だが、ルーシーが断ると態度が急変しいきなり首を絞めた。ルーシーはなんとかそばにあった金魚鉢で禎司を殴りつける。

 

チェロの習い事で知り合った女性がルーシーのもとへやってくる。そこで階段から足を滑らせて亡くなってしまった山本さんのことでさえも「自分が死に憑りつかれているから」だとルーシーは話す。するとその女性は山本さんがやってくる2日前にワックスをかけたことを伝え忘れたということを話し始める。「私のせいなのかしら?」そう泣く女性を見てルーシーは泣きながら手を取る。(ルーシーはその女性の中に自分自身を見つけ、その人を通して自分のことも許せると感じた)

 

 

 

タイトル「アースクエイクバード」の意味

 

作中では2回地震が発生し、アースクエイクバードとは地震が収まったときにする鳥の声」のことであると言及されている。

もちろん「地震の国」だという日本の色を出したかったのもあるのかもしれないが、一つ解釈できるのは大きな物事の変化とそれに対する不安、そしてそのあとに感じられる一時的な安心感という不安定な感情の起伏を表す比喩だということだと思う。

 

問題の地震はいつ起こったのかと言うと「禎司と出会って初めて秘密の撮影場所に連れて行かれた時」と「リリーが泊まりに来た時」

 

言い換えれば1つ目は「ルーシーと禎司が出会った日」であり2つ目は「リリーと禎司が出会ったすぐ後」でもある(リリーが泊まりに来る前に3人で初めて顔を合わせ遊んでいたシーンがあり、ルーシーの家でリリーが「彼に会えてよかった」と言っているのでそんなに日は経っていないと考えられる)

つまりこの物語の大きな分かれ道だったところで地震が発生しており、鳥のさえずりはそのあとに来る気休め的安心感の象徴なんじゃないかと思う。

 

全体的な感想

日本的な息苦しさやアリシアの不安定さ、それと対照的なリリーの大胆さ、何より小林直己の不気味さ、空気感がすごく良くて引き込まれた。

話のプロットは結構シンプルだし、リリーを殺した犯人を当てることが目的の映画でもなく、それでもこんなに面白いのはやっぱり画の良さ役者陣の演技の奥深さにあったような気がする。僕はNetflixで観たけど劇場でもやってるとか。是非観てほしい一本です。